大山加奈のVolleyball is Life BACK NUMBER
共栄学園バレーはなぜ“楽しい”か。
大山加奈「ビーチは遊びじゃない」
posted2020/01/29 07:00
text by
大山加奈Kana Oyama
photograph by
AFLO SPORT
2020年、最初の公式戦。春高バレーが閉幕しました。
男子は東山、女子は東九州龍谷が優勝。どちらも素晴らしいチームでしたが、特に男子大会はレベルが高かった。単にいい選手がいるというだけでなく、戦術遂行能力も高く、昨秋のワールドカップで見せた男子日本代表の戦い方と同じように多くの選手がジャンプサーブで攻める。
加えて攻撃に対する意識も高く、レシーブしてそれで終わりではなく、すぐ助走へ入って打つ、それも前衛だけでなくバックアタックも打つなど積極的で、見ていて気持ちのいいバレーボールをするチーム、選手がとても多かった。トップカテゴリーでのワクワク感が、アンダーカテゴリーの高校生にも受け継がれている印象を受けました。
共栄学園のバレーは楽しかった。
女子大会の中で、特に私が好感を持ったのは3位の共栄学園です。まず、単純に見ていてバレーボールが楽しかった。世界のスタンダードに基づいた、目指してほしいバレースタイルはこれだよね、という戦い方を実践していたように感じました。
まずファーストタッチが丁寧で、意識的にゆっくり、高く返すことにプラスしてスパイカーもしっかり助走を取って、スロットを変えながら同じテンポで複数入ってくる。
女子は男子と比較しても早い時期からポジションを固定しがち。よく言えばスペシャリストが育ちやすいのですが、裏を返せば「これしかできない」というデメリットにもなってしまう。
そんな中、共栄学園はポジションにこだわらないポジションレスの概念が浸透していて、全員がいろいろなところから攻めるのが特徴です。
さまざまなポジションができる器用な選手が揃い、共栄学園はこれまでも独自のコンビバレーを展開していましたが、どうしても以前は「速く攻めよう」という意識が先行してファーストタッチが低くなりがちでした。そのため準備ができないまま攻撃展開しなければならず、バタついてしまう場面も多く見られましたが、今年の春高ではファーストタッチを高く、と徹底し、アタッカーが十分に助走する間ができた。
あまり目立たないプレーではありますが、意識の差や徹底し続ける結果が大きな差になるということを共栄学園が証明していたのではないでしょうか。