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春高バレーの過密日程に「ノー」。
高校生の努力に報いる策はあるのか。
posted2020/01/16 11:40
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kyodo News
1月7日、春高バレー準々決勝。
誰もが、この1本は彼に上がる。疑いなく、そう見ていた。むしろ祈るように。上がってくれ、上げてくれ、と。
そして予想通り、いや期待通り、トスが上がる。セッターが触る前に助走準備に入っていた水町泰杜(鎮西)がバックセンターから跳び、その水町に対し、駿台学園のブロックは3枚。
1本目はブロックに当たり鎮西コートに返り、すぐさま助走に入った水町がまた打ち、2本目もブロックに当たったボールが鎮西コートへ。そして3本目、打って、下がって、と動き続けるエースにセッターの前田澪は迷わずトスを上げ、水町が打つ。
だが、三度目の正直、はならず。
3本目のバックアタックはブロックに当たり鎮西コートに落ちた。20-25。セットカウント1-2で敗れた鎮西、主将の水町は両膝に手をつき、うずくまる。ユニフォームで涙を拭いながら、頭を抱えて。
鎮西に送られた大きな拍手。
そしてそんな水町の両肩をチームメイトが支え、会場から大きな拍手が沸き起こる。決して大げさではなく、それは大会で一番と言ってもいいほどの大きさと、温かさ。拍手に声が乗せられたなら、きっと「よくやった」「頑張った」と水町を、そして水町と共に戦い続けた鎮西の選手たちを労うものであったはずだ。
頭からタオルをかぶり、サブアリーナでも多くのカメラや記者に囲まれながら水町は泣いた。そして、ひとしきり涙した後、見せた顔は清々しかった。
「最後に集まって来たボールを打って行かないといけなくて、自分が打てれば勝てるし、自分が打てなければ負ける。自分にしかできない経験でした」