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08年に独立、16年にFIFA加盟……。
コソボがサッカーの力で蘇る!
text by
ロマン・ウェルテルRomain Welter
photograph byRomain Welter/L'Equipe
posted2020/01/22 11:40
コソボの街角では、代表チームカラーの青色と黄色のジャージとスカーフが大人気。
欧州で活躍するコソボ人サッカー選手たち。
試合の日には、代表選手たちのレプリカを身にまとった子供たちや大人の男女が通りに溢れている。
その情熱の伝播を、アルベルト・ハシャニは次のように解説する。
「僕が子供のころは、メッシやロナウド、ルーニーの名前が背中に入ったシャツを着ていた。今は違う。子供たちが着ているのは、ミロト・ラシカやアルベル・ゼネリ、へクラン・クリエジウ(ともにコソボ代表)のシャツだからね」
そうした選手たちの中には、すでに他国のリーグでプレーしている選手――ミロト・ラシカ(ブレーメン)やストライカーのベダト・ムリキ(フェネルバフチェ)、ディフェンダーのアミル・ラフマニ(ベローナ)などもいる。
彼らの活躍が、コソボで育っても将来はヨーロッパのトップチームでもプレーができる可能性を子供たちに与えている。
訪れたイングランド人の多くがコソボに感謝を。
同様にコソボにとってサッカーは、費用のかからない最高の国外向けプロパガンダでもある。
試合結果がその役割を果たしているのはもちろんだが、EURO予選最終戦となったホームのイングランド戦(2019年11月17日)では様々なイベントやフェスタが開催された。
訪れた数千人のイングランドサポーターは、90年代末のセルビアとの紛争の際にイングランドが果たした役割を忘れていないコソボの人々に快く迎えられた。
このときのスローガンが《ウェルカム・アンド・レスペクト》。この言葉は、コソボとイングランド両国旗のイラストとともに、通りやファサード、バー、レストラン、商店など街のいたるところに飾られた。両国のサポーターは至福のときを分かち合い、最後は一緒に歌を歌って心を通い合わせたのだった。
街角では、コソボの人々が、遠路はるばる出向いてきたイングランド人に感謝する姿がそこここで見かけられた。
遠征先で嫌われることの方が多いイングランド人も、コソボ人のもてなしに心から感銘を受けていた。それはイングランドのプレスも同様で、コソボが示したホスピタリティとフラタニティ(友愛の精神)に紙面を大きく割いたのだった。