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08年に独立、16年にFIFA加盟……。
コソボがサッカーの力で蘇る!
text by
ロマン・ウェルテルRomain Welter
photograph byRomain Welter/L'Equipe
posted2020/01/22 11:40
コソボの街角では、代表チームカラーの青色と黄色のジャージとスカーフが大人気。
生まれたての代表チームが勝利を重ねた!
実際、コソボ人にとっても、予選において自分たちの代表がモンテネグロ(ホーム、2対0)やブルガリア(アウェー、2対3)、チェコ(ホーム、2対1)といった名の知れた国々から勝利を得たのは大きな驚きだった。
イングランドに対しても、敗れはしたものの初戦のアウェー(第6節、2019年9月10日。5対3)で3得点を挙げたのは大健闘といえた。
コソボの人々は、ダルダネットがどれだけ成熟し、どれほどの進化を遂げたかを、今はよくわかっている。
ツイッターでコソボの情報を発信し続けるアルベルト・ハシャニは、コソボ代表は「大人との対戦に戸惑う赤ん坊ではもうない」と語るのだった。
彼らの活躍は、首都プリシュティナはもちろんコソボの国中を熱狂させた。
コソボ人の日常生活は、さまざまな問題――EU諸国への渡航ビザ獲得の難しさや高い数字を保ったままの失業率、社会全体にはびこる不正など、ネガティブな要因に溢れている。ダルダネットは、そんな生活に苦しむ人々に希望を与えたのだった。
「彼らを国の象徴と見なすのはとても大事なこと」
「たとえ1週間しか続かないにせよ、代表の試合が日常生活の厳しさを忘れさせてくれる。代表選手たちはピッチ上でもピッチを離れても素晴らしい。彼らは僕らの心の中に誇りを植えつけてくれた」と、ジャーナリストのグゼマジル・レクシャは語っている。
ベルナール・シャランドも、代表選手が果たしている象徴的な役割をよく理解している。
「人々が彼らを国の象徴と見なすのはとても大事なことだ。コソボの状況はとても複雑だ。サッカーが国民を幸福にするのであれば、これほど喜ばしいことはない」
スペインやギリシャ、ルーマニアといった国々から、コソボはいまだに国家として承認されていない。
勝利が国民にどんな夢を見させているかをグゼマジル・レクシャが解説する。
「凡庸なチームに過ぎないコソボが名のある国々を破った瞬間に、国民がどんな気持ちになるか想像できるかい? 国家としては否定されているコソボがそれを実現したのだから、こんな痛快なことはないだろう」
その様子は、プリシュティナの街中でも良く見てとれる。