松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
「東京2020後はパラクライミングに!」
と語る伊藤力に松岡修造がエール。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/01/25 08:00
伊藤「いつだって何か新しいことに挑戦したい。そんな気持ちで日々過ごしてますね」と言う言葉を聞いて松岡さんも大きくうなずく。
「最終的には自分を肯定したいんだと思います」
松岡「最後に2020年に向けての気持ちを聞かせてもらえますか。力さんは2020年で金メダルを獲ると宣言してます。それは目標なのか、夢なのか」
伊藤「何でしょうね。最終的には自分を肯定したいんだと思います。この4年間やってきた、その選択を肯定したい。やっぱりこんなんだから批判も多いんですよ。ステップをしないとか、練習のやり方だとか、それを間違っていなかったじゃないかと、ぜんぶ肯定してやろうと思って。僕のような30を超えた選手が1日5時間、6時間の練習を毎日やるのは無理ですからね」
松岡「根性論だけでは戦えないぞと。さっき、実験という話がありましたけど、たとえ結果がどうであれ、自分がやりたくてやってきていることだからどんな答えが出ても納得できる気がしますね」
伊藤「そうですね。責任はすべて自分にあるので。勝てなかったら練習が甘かったということだし、反省はすると思います。そこでまた4年後を目指したいと思ったら、きっとまた努力するでしょうし」
「落ち込む10日間と、吹っ切れた10日間と……」
松岡「今日お話を聞いて、まさかこんなストーリーだとは思ってもみなかったです。テコンドーと出会ってから、分厚い協会の支援を受けて、一気に日本代表に登りつめたというイメージだったから。マイナスの要素もすべてプラスに変えてきたのは力さん自身の行動力でしたね」
伊藤「ヘンな喩えですけど、腕がなくなるじゃないですか。それで落ち込む10日間と、吹っ切れた10日間と、同じ時間でもどっちが自分にプラスかと考えたら……」
松岡「ちょっと待って。それは僕がジュニアに指導していることと同じなんですよ。プレー中にミスをした。そこで悔しい顔をして、筋肉を硬直させていたら、次に良いプレーができないだろうって。だったら、自分がポイントを取ったと思え、勘違いしろ、と僕は言うんです。でも、腕を失うのと、ポイントを失うのとでは、意味合いがまったく違います」
伊藤「けど、そのポイントがグランドスラムの決勝で、ジョコビッチを相手にした最後の1ポイントだとしたらどうですか。このポイントを取ればグランドスラムを初制覇できる。そのポイントと腕だったら、重みはそんなに変わらないと思う。たとえ腕がもげたって初制覇したいと考えませんか」
松岡「なんか話が大きくなってきましたよ」