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春高バレーの過密日程に「ノー」。
高校生の努力に報いる策はあるのか。 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byKyodo News

posted2020/01/16 11:40

春高バレーの過密日程に「ノー」。高校生の努力に報いる策はあるのか。<Number Web> photograph by Kyodo News

最後の春高は準々決勝で駿台学園に敗退した水町泰杜(鎮西)。高校卒業後は早稲田大学に進学予定だ。

1年前の経験を生かして変化した。

 必然的に、1年前の光景が蘇る。

 同じ1月7日だった。連覇を狙う鎮西は準々決勝に勝利し、準決勝進出を決めていたが、試合中から攻撃の大半を担う水町は両足が攣っていて、着地もままならない状態だった。

 それでも彼以上の決定力を持つ選手はいない。トスを上げる前田は、水町に頼らなければならない状況を理解しながらも、ボロボロになってもなお打ち続ける2年生エースに「申し訳ないし、苦しい」と膝を抱えて涙を流した。紡ぎ出す言葉の1つ1つに、胸が痛んだ。

 だが、それから7カ月が過ぎた夏。宮崎のインターハイで見た鎮西に、変化を感じた。

 もちろん水町の打数はチームで一番多く、要所は水町にトスが上がることに変わりはない。だが、まだ完璧なタイミングではなくともミドルを使ったり、エース一辺倒の攻撃から何かを変えようとしている姿が、確かにあった。

笑顔で高校バレーを終えた前田。

 初戦で対戦した東山に敗れはしたが、水町や前田にとって最後の春高でどんな戦い方を見せるのか。インターハイからそんな期待感を募らせ、迎えた春高。1人のエースとして、技術や体力だけでなく、感情表現をより露わにするようになりさらに逞しさを増した水町はさることながら、果敢にミドルを使おうとする前田の成長。

 水町と荒尾怜音、同世代を代表するエースアタッカーとリベロをつなぐ立場として「負けたら全部自分のせいだと思っていた」というセッターは、最後の一戦となった駿台学園との準々決勝の最終セット終盤、前衛にいた水町ではなくミドルの速攻を使った。その1本は決まらなかったが、紛れもなく大きな、成長の証だった。

 駿台学園に敗れ、直後は悔しさで涙したが、不思議と後悔はない。前田はそう言った。

「あの1本(速攻)が正解だったかどうかはわからないです。でも、自分がここ、って決めて上げたところなので。こんな自分の、うまくないトスも上げたら絶対決めてくれる水町は、いつだって大きな存在でした。一緒にバレーができて、本当に楽しかったです」

 うつむくのではなく前を見る。いい笑顔だった。

【次ページ】 浮かび上がる過密日程の問題。

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