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春高バレーの過密日程に「ノー」。
高校生の努力に報いる策はあるのか。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/01/16 11:40
最後の春高は準々決勝で駿台学園に敗退した水町泰杜(鎮西)。高校卒業後は早稲田大学に進学予定だ。
ダブルヘッダーは苦肉の策。
ではなぜ、このようなスケジュールが組まれるのか。
そこにはいわゆる大人の事情が含まれる。
まず1つの壁がテレビ中継だ。主催でもあるフジテレビは準決勝、決勝を地上波で中継するため、より関心が高いであろう組み合わせを先にするか、後にするか。同時間帯の他局のコンテンツも含めて検討するため、より多くの視聴者を獲得するためには、今回のように準決勝が女子から男子であったにも関わらず、決勝が男子から、と試合順に矛盾が生じることもある、と関係者は言う。
テレビ中継が壁、と言うと、放映側ばかりに責任があるように思われるかもしれないが、そう単純ではなく、3回戦と準々決勝のダブルヘッダーに関して言えば、中継するテレビ局の要望ではない。むしろ放送する側としては、3月開催時に7日間で行われていたように、1日1試合を希望したのだが、高体連は却下。同時期に公立高校の始業式が行われるため、大会役員や審判など、公立校の教諭が欠席することがないよう、開催時期が1月に移行した時点で5日間での開催、しかも始業式への出席を義務付ける。ダブルヘッダーはそのための苦肉の策だった。
「春高」を知ってもらうことはメリット。
より多くの人たちに「春高」というフィルターを通して、競技を知ってもらうこと。大会を放映してもらうことは、むしろ大きなメリットだ。
華やかにライトアップされた場所で戦える喜びや、オレンジコートへの憧れ。それが「バレーボールをやって春高に出たい」と次世代につながっていくのは確かで、出場した多くの選手が敗れるたび「またここに戻って来たい」と悔し涙と共に、瞳を輝かせる。
とはいえ、この過密日程が正しいかと言えばもちろんノーだ。連日連戦となることや、1日の試合数が多いため試合順によっては待ち時間が長くなること。時には21時近くまで試合が行われる現状は、高校生の大会として健全であるかは考えるまでもない。
選手の将来を守らなければならない。けれど“春高”というブランドを保ち、競技としての華やかさも保ちたい。ならば、何をすべきで、何ができるのか。