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遠藤航の“待つことができる”才能。
ブンデス昇格へ、試運転は済んだ。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/01/16 08:00
東京五輪オーバーエイジ枠の有力候補ともされる遠藤航。ドイツの地でリーダーシップと中盤としての能力が花開くか。
いまできることを考え、向き合う。
「待つことができる」のは、ひとつの能力かもしれない。ある程度冷静に自分の置かれた状況を分析し、すべきことを見定めて、熱くなりすぎることなく、だからといって冷めてしまわないほどに、自分をコントロールすることが求められるからだ。
遠藤は、その時々で「いまできることは何だろう」と考え、現状と常に向き合ってきた。移籍当初の9月初旬、ボーフム戦後にはドイツサッカーとベルギーサッカーの違いについてこう語っていた。
「ドイツの方が結構ゾーンをしっかり引いて、ブロックで守るという感じ。もちろん前からプレッシャーをかけていくところ、切り替えのスピードの速さはベルギーより速いかなと思います。
より組織的なイメージはあるので、日本に近いというか、やりやすさは感じています。ただ僕もベルギーのサッカーに順応していたところがあるので、しっかり人に行くとか、そのあたりのところは対応していかないといけないと感じています」
ドイツのサッカー、シュツットガルトのサッカー、監督が求めているサッカー。試合を見ながらひとつひとつをしっかりと理解し、練習のなかでチャレンジし、アピールを繰り返して少しずつ信頼を積み重ねてきた。
デビュー戦が「ひとつの肝」に。
デビューとなったカールスルーエ戦ではアンカーとしてスタメン出場を飾り、攻守に躍動感を見せて中盤に安定感をもたらした。シュツットガルトの地元紙は「探していたピースが見つかった」と好評価を与えた。その後は'19年最終戦となったハノーファー戦まで5試合連続でフル出場を果たした。
急に成長したわけではない。そのときがくるまで、どれだけ入念に準備をしていたかがポイントだった。
「あの試合はひとつの肝でしたが、試合に出られない時期、チャンスを掴む準備をずっとやってきたからこそ掴めたと思いますし、継続してきたことがよかったと思います」
これは、12月9日のニュルンベルク戦後のコメントだ。