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“挑戦的辞退”で世界選手権に集中。
宇野昌磨、ランビエルと新局面へ。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2020/01/10 11:50
全日本選手権ではショートで105.71点とISU非公認ながら自己ベストを更新、続くフリーも184.86点をマークし合計290.57点で4連覇を達成。
「ゆづ君の凄さを本当に実感しました」
期待に応えるとは、つまり結果を残すこと。
しかし結果を意識し始めると、練習も、そして試合も楽しくなくなった。2019年の世界選手権は、柄にも無く「勝利宣言」をすると、力を発揮できずに4位。3年振りの表彰台落ちとなってしまった。
「『ゆづ君(羽生結弦)みたいに強くなりたい』という想いで試合に臨むようになり、改めてゆづ君の凄さを本当に実感しました。
『これだけ自分にプレッシャーをかけながら、どうやって、試合に良い演技をもってくるんだろう』と。僕は結果を出せなくなってしまい、ゆづ君ほど自分に厳しくなることが出来ませんでした」
結果にこだわると、さまざまな心理的なストレスがかかり、練習の成果を発揮できない。そこで宇野が考えたのは、練習のレベルを上げることだった。
無茶ともいえる逆転の発想。
「練習が10だとしたら、試合では6~7割しか出せなかった。だったら、もっと練習の基準を上げるしかありません。僕は、練習があってこそ本番がある。今後それを目指します」
練習での完成レベルを高くすれば、本番で6割しか力を出せなくても闘える。そんな無茶ともいえる逆転の発想だった。
では、練習を格段にレベルアップさせるには何をすればいいか――。
その結論が、自分に厳しくするため、メインコーチ不在で孤高に戦うという道。これが、2つ目の試練となった。
シーズンオフの間は、各国の有名コーチの夏合宿に参加して、いろいろな指導法を体験した。
6月にはロシアのエテリ・トゥトベリーゼのチームの合宿に参加。8月にはカナダ・トロントで、初めて海外の振付師のもとでプログラムを制作した。
そして9月には、スイスのステファン・ランビエルの夏合宿に参加。これが新たな運命への伏線になった。