“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田戦は昌平サッカーの分岐点。
「育てて勝つ」指導と来季への期待。
posted2020/01/07 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
高校サッカー選手権準々決勝。昌平高校は青森山田高校に2-3で敗れた。前回大会優勝校にして、今季の高円宮杯プレミアリーグも制した王者の壁は想像以上に厚かった――。
「今年は内容にこだわりながら結果にリンクさせると考えていたので、勝負強さにフォーカスを当てていました」
試合後、チームを率いる昌平・藤島崇之監督は無念の表情を浮かべながら、こう語った。
「育てて勝つ」
これは藤島監督が信念として持っているものだ。昌平のサッカーは「パスサッカー」と表現されることが多いが、ただ単にボールをつなぐことに固執しているわけではない。常に相手を見てから、自分たちの立ち位置、アプローチを考える。その上でゴールへの最短ルートを辿り、そのルートを作り出すために全員でボールを動かす。
「縦に速いサッカー」という概念は決して1つではなく、それぞれ捉え方が違う。昌平の場合は、いかにマイボールにしてからスピーディーに攻め切れるか、と捉える。そこにはショートパスの連続もあれば、ドリブル、ミドルパス、ロングパスでシンプルに狙うこともある。最終的な目法はゴール前にいかに効果的に侵入してゴールを奪うかであり、選手たち自身が選択して組み立てていくのだ。藤島監督は続ける。
日本一のために築いた守備の連動。
「サッカーの質にこだわるスタンスは変わりませんが、それだけではなく、勝負にもこだわっていきたいと思っています。チームとしていいサッカーをするベースはありますが、選手たちには当然勝ちたい気持ちがある。勝って次のステージで選手たちが成長できる環境を作りたいと思っています」
勝利至上主義ではない。かと言って「育成」という言葉で勝負の厳しさを蔑ろにするつもりもない。双方を大事にしながら、二兎を得る方法を模索する。成長するために必要な舞台を自分たちで勝ち取っていく環境をいかに作り出せるか。藤島監督は今年、そこにこだわりを持っていた。
「うちは割と攻撃的なチームという見られ方をしていますが、守備の連動からの次の運び出しという部分は良さが出ている。選手の意識レベルも、日本一を獲るという明確な目標をしっかりと見据えてできていることが大きい」
今年のチームは、立ち上げ当初は「守備が脆い」と言われていた。どうしても昌平のイメージから攻撃を得意とする選手が多く入ってくる流れもあり、守備陣は攻撃陣からのコンバート組が多かった。しかし、トレーニングから相手の狙いを読む、連動したプレスを仕掛けて、奪い取るという部分まで徹底して要求した。
「相手の良さを消すこともサッカーでは大事ですし、そこへのアプローチも相手に合わせて良さを消す方法と、自分たちの良さを出すことで相手の良さを消す方法がある。すべてが一概に言えないからこそ、普段の練習からいろんな思考を持って、試合の準備をしていこうと取り組みました」