“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田戦は昌平サッカーの分岐点。
「育てて勝つ」指導と来季への期待。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/01/07 08:00
1年時から10番を背負うMF須藤直輝(2年)。青森山田戦でも反撃のゴールを決めた。
3失点でも折れない昌平。
インターハイ予選こそ2回戦で正智深谷に0-3の完敗を喫したが、彼らはぶれなかった。埼玉県リーグ1部を15勝3分けの無敗で4連覇すると、選手権予選も制し、2年ぶり3回目の選手権出場を手にした。さらに選手権直前にあったプリンスリーグ関東参入戦では水戸ホーリーホックユースを4-1、ジェフユナイテッド千葉U-18を3-0と退けて、来季のプリンスリーグ関東の昇格権も手にした。
この勢いを持って選手権に突入した昌平は、いきなり屈指の好カードとなった2回戦・興國戦を2-0。続く3回戦・國學院久我山戦では1-0と、いずれも難敵を無失点で下し、同校サッカー部史上初となる選手権ベスト8に進出した。
迎えた準々決勝。「真の日本一」の看板を背負う青森山田の圧倒的な強度の前に、前半だけで3失点。結果的に見れば、それが最後まで重くのしかかった。しかし、彼らが見せた戦いは藤島監督がこれまで積み上げてきたことの道筋を示すものだった。彼らは最後まで折れなかったのだ。
昌平の揺さぶりにも動じない王者。
立ち上がりの出来は上々だった。8分、ボランチの柴圭汰がトップ下の紫藤峻に縦パスを入れる。紫藤がダイレクトで落としたボールを右MF鎌田大夢(福島ユナイテッドFC内定)がすぐに紫藤に戻すと、FW小見洋太が空けたコースをドリブルで運び、シュートを放った。
このシュートは相手DFにブロックされるが、今度は右SB柳田亘輝が前向きに拾うと、そのまま右ワイドに開いていた紫藤へ。鎌田を経由したボールを右タッチラインギリギリの位置で受けたボランチ柴は、柳田とのワンツーで一気にカットイン。相手の寄せを紫藤がスクリーンをしてコースを空けると、柴は右前方のペナルティーエリア内に侵入、左MF須藤直輝に縦パスを送り込んだ。鮮やかな右アウトサイドでのトラップで前に持ち出した須藤は、間髪入れずに中央へ折り返した。
このボールは合わず、逆に青森山田にカウンターを食らってしまうが、浦和レッズ内定のMF武田英寿(青森山田)に対してCB柳澤直成が全速力で戻り、シュートはCB西澤寧晟が気迫のブロック。
昌平の選手たちがサポートを続けたからこそ生まれた連続攻撃と、素早い攻守の切り替えと身体を張った守備を王者に見せつけた。
だが、そこまで揺さぶられてもシュートを前に飛ばせなかった青森山田の守備と、カウンターの速さはハイレベルなものだったのだろう。ここから王者は牙をむき始める。
10分、青森山田期待の1年生・MF松木玖生の折り返しをMF浦川流輝亜がシュート。昌平GK牧之瀬皓太が一度はセーブするも、こぼれ球を再び浦川に押し込まれ先制を許すと、19分には柳澤のクリアボールが相手に直接渡ってしまい、追加点を奪われた。さらに、何とか立て直した前半終了間際には、青森山田のエース武田に豪快なヘッドを決められた。