高校サッカーPRESSBACK NUMBER
個性を伸ばしても“俺様”にならない。
高校、Jと違う三菱養和の面白さ。
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph bySatoshi Shigeno
posted2019/12/29 11:40
東京・巣鴨の一角にある三菱養和SC。アクセスも風通しも抜群な総合スポーツクラブだ。
「子供たちの輪に入ると救われる」
ユース監督であってもスクールの指導を義務付けている仕組みも、他のクラブから見ると珍しいことだろう。
「他のクラブさんには大変だねとよく言われますが、僕からしたら全然(笑)。逆にユースで負けが続いた時などに、子どもたちの輪に入ると救われることもあるんです。
それにミスをしても『大丈夫、俺が取り返すから』と仲間に声をかけることは僕が大好きな養和らしい部分でもあるので、そういうメンタル的なことを小さい頃に根付かせる意味でもスクールに参加することは重要だと思っています。意見の言い合いはいいですが、仲間を貶すような男になってほしくない。それがいずれ中学、高校と自然と染み付いていくと思うので」
自然と染み渡る三菱養和愛。組織づくりも、育成も少しずつゆっくりと、だ。
「中学生や高校生も少し早くに顔を出して、子どもたちと一緒にボールを蹴ってくれる。それを見て子どもたちは憧れるし、逆に上の子たちも何も言わずとも、三菱養和SCを背負って戦う。これはみんなが一貫して同じグラウンドを使うからできる。だからホームでの試合はめっぽう強い。アウエーではなぜか勝てないんですけどね(笑)」
OBたちが三菱養和を愛している。
調子を上げてきたプリンスリーグ終盤。連勝で上位進出も見えた最終戦は、ホーム巣鴨グラウンドに名門ヴェルディユースを迎えた。中学時代の対戦では手も足も出ず「ボコボコにされた」相手にエース栗原の2ゴールで勝利。最高の雰囲気だった。
「最後にヴェルディさんに勝てた。成長を目の当たりに感じれるのは嬉しいことですね」(生方)
生方は、OBの選手たちが今もなお養和に対して愛情を持っていることを次々と明かしてくれた。
初代表招集直前にクラブを訪れた相馬は、最後までスクールの子どもたちに触れ合っていた。45年の歴史で初めて高3を待たずしてプロに進んだ中村はルヴァンカップで得た景品のお菓子をクラブへ大量に送った。
もう卒業して何年も経つのに「2人ともスペースはさえあればボールを蹴っていた」と記憶がすぐに蘇る小川や田中とは今でも連絡を取り合い、加藤は歴代でも一番仲が良かった世代と振り返る。