卓球PRESSBACK NUMBER
勝っても負けても涙の日本女子卓球。
石川佳純と平野美宇が通った修羅の道。
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byZou Zheng/Xinhua/AFLO
posted2019/12/17 20:00
「ノースアメリカンオープン」で優勝した時の石川佳純。平野美宇は「(カナダでの負けで)気持ちの整理はついていました」と告白。
ポイント獲得競争で毎週転戦する状況に。
シングルスの2枠に入らなければ五輪代表入りは確約されない。そこから漏れて3番目になってしまえば、4番目以降の選手が団体戦要員に選ばれる可能性も出てくることとなり、3番手と言えども代表内定者が発表される2020年1月6日まで気を揉みながら当落を待つ身となる。
この危機感が……選手たちをランキングポイントの獲得競争に駆り立て、毎週のように開かれる国際大会を休む間もなく転戦させることとなった。
チャンスを逃した平野、土壇場で逆転した石川。
伊藤が抜けた後の代表選考レースは、世界ランキングでは常に石川が平野を上回っていたが、代表選考基準にある2020年1月時点でのランキングポイント計算では、これまでの累計得点として11月まで平野がリードしている状態だった。ただ、それもわずか65ポイントで、代表選考レースは僅差のままクライマックスの12月を迎えていた。
ポイント獲得が望める大会も残り2大会。石川と平野はまず「ノースアメリカンオープン」(4〜8日/カナダ・マーカム)にエントリーし、世界のトップランカーが出場していない、ワールドツアーの格下大会での優勝を狙った。
その結果、決勝で2人の直接対決が実現し、そこで勝った石川がランキングポイントで平野を逆転。135ポイントのリードを築くことに成功した。
勝った瞬間、石川はタオルで顔を覆い泣きに泣いた。
「私も美宇ちゃんも精神的に苦しい状態で決勝であたって、本当に自分との戦いでした」と石川。この時の涙は勝った喜びよりも、それまでの重圧から解き放たれ、溜め込んでいたいろいろな思いが一気に堰を切ってあふれ出した、そんな涙だった。