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柔道グランドスラム「追う立場」が
勝つのを見て思う、羽生結弦の強さ。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2019/12/01 11:40

柔道グランドスラム「追う立場」が勝つのを見て思う、羽生結弦の強さ。<Number Web> photograph by Getty Images

女子70kg級で優勝を果たした大野(左から2番目)。'17年、'18年と世界選手権2連覇の新井は3位となった。

背水の陣に身があったからこそ。

 追う立場であり、瀬戸際に自分がいることの自覚があったことがわかる。

 そんな背水の陣に身があったからこその優勝と言える。

 翻って、追われる立場にあった世界選手権優勝の女子52kg級の阿部詩。

 自身48連勝中だった海外選手を相手に決勝で敗れ、準優勝となった阿部は、「最後にもっと怖がらずに攻められたら」と語っている。敗れることを恐れ、慎重になった面があったのは否めない。

 勝てば内定は濃厚と思われていただけに、重圧から守りに入った、とも捉えられる。

 それもまた、崖っぷちに立ち、勝つしかない、言い換えれば、勝ちにいくことに集中できる追う立場の強みを示している。

 シンプルに追う立場に自分を置けるか否か。追う立場に置ければ、本来の強さを発揮しやすいとも言える。

卓球・平野美宇の敗因とは?

 代表争いが大詰めとなっている卓球の女子は、伊藤美誠が代表内定を確実にし、シングルスのもう1枠を平野美宇、石川佳純が競っている。

 2020年1月の世界ランキングで決まるが、有効となるポイントで見ると、上位の平野(10295pt)と石川(10230pt)の差は65ポイントと僅差、争いの激しさが分かる(11月時点)。

 平野は、先日のT2ダイヤモンドで1回戦負けを喫した。過去、負けたことのない相手だった。

 試合後、平野は最終ゲームを振り返り、「負けているときには思い切ってできるのに」とコメントした。試合の中ではリードしたりされたりする局面がある。リードすると思い切りのよさが消えたことが敗因の1つであることを示唆している。

【次ページ】 羽生結弦は常に追い続ける姿勢を保つ。 

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