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柔道グランドスラム「追う立場」が
勝つのを見て思う、羽生結弦の強さ。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2019/12/01 11:40
女子70kg級で優勝を果たした大野(左から2番目)。'17年、'18年と世界選手権2連覇の新井は3位となった。
羽生結弦は常に追い続ける姿勢を保つ。
追う立場、追われる立場それぞれで心理に違いが生まれやすい。リードしている平野は、どこか「勝ちたい」よりも「負けたくない」という気持ちが強まったのかもしれない。そんなことを考えさせられる。
アスリートは、追われる立場と自覚することや守りに入ることの怖さを知っている。
だから、優勝するなどしても、「これからも挑戦していきたい」「挑戦者だと思ってこれからも臨みます」といった発言をすることが多い。
実際、そうであろうとしているのだろう。
それでも無意識のうちに、それをさえぎる思いがしのびよる。常に挑戦者でいることの難しさがそこにある。
追う立場であることの重要性を知り、常に追い続ける姿勢を保つ選手もいる。男子フィギュアの羽生結弦だ。先日のNHK杯の優勝後、こう語った。
「常に追ってます。今は全世界がスケートカナダの演技ですかね、スケートカナダの演技を追ってくると思うんですよ、これから。ただそれは僕自身も一緒で、僕もあの演技を超えたいし、あの点数を超えたいってすごく思っているので、常に追っているんだなって思っています」
他の誰でもない、自分自身を追いかけ、乗り越えようとしてきた。他者に振り回されず、自らを突き詰める――羽生の強さの1つであり、スポーツにおいて、大切な側面を示している。