水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
水沼貴史が高校世代に求める素質。
「伸びる選手にあるものは……」
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byGetty Images
posted2019/11/29 11:30
試合を前にワクワクした表情の藤田(6番)と、集中を高める若月(9番)。彼らの成長が日本サッカーの希望となる。
飛躍する選手が持つ向上心と客観力。
日本だけでなく世界に目を移してみると、今大会も多くの才能を持った選手が現れましたね。改めて、強豪国の競争意識は凄まじいものだと感じます。
優勝したブラジルでは、MVPに輝いたガブリエル・ベロン(パルメイラス)、決勝でも抜群のクロスの精度を誇ったヤン・クート(コリチーバ)が個人的に好きな選手でした。
ブラジルは「自分はこういう選手になりたい」という意志が背番号で伝わってきます。2人もまさにその典型でした。ベロンはテクニック系ウインガーが背負う7番、サイドを何度も駆け上がって決定機を作っていたクートは右サイドバックの2番。こんな意識づけの一つも、多くのスペシャリストが生まれる要因でもあります。
それに、この世代にはリベルタドーレス杯で優勝したフラメンゴから招集許可が降りなかったエース格(レイニエール)もいると聞きました。底知れないタレント力に改めて驚かされます。
つまり、彼らはたとえU-17W杯でいい結果を残したとしても、このままA代表に上がれるわけではない。上には上が、また代表に入れなかった選手たちの突き上げもある。熾烈な競争で生まれる向上心、そして自分を客観視する力。日本の選手たちに限らず、10代の選手が伸びるために、この2つを持っているかどうかは、重要だと思いますよ。
チャンスを逃さないメンタリティ。
前回大会で優勝したイングランドにいたカラム・ハドソン・オドイ(チェルシー)やジェイドン・サンチョ(ドルトムント)、フィル・フォデン(マンチェスター・シティ)らはすでに世界トップで活躍しています。
またこの世代でいえば、スペインのアンス・ファティはU-21に飛び級で招集されているし、あのバルセロナでいきなりゴールを決めている。海外には若手に積極的にチャンスを与える文化がありますが、そのチャンスを逃さないというメンタリティが高校世代の選手たちに備わっているんですね。
環境の違いはあれど、最終的に到達したい目標を見据えて課題を改善していく。そういったパーソナリティの意識の部分は指導者の力だけでは変えることは出来ません。