水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
水沼貴史が高校世代に求める素質。
「伸びる選手にあるものは……」
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byGetty Images
posted2019/11/29 11:30
試合を前にワクワクした表情の藤田(6番)と、集中を高める若月(9番)。彼らの成長が日本サッカーの希望となる。
警戒されたときに良さを出せない。
ただし、日本はその“警戒”を攻略できなかった。0-0だったアメリカ戦も然り、スペースがある状況でのプレーには自信を感じますが、スペースを消されると良さが出せない。では、どうスペースを作って、どう使うのか。これは選手個人だけの課題ではありません。
今回の大会を通して各国の戦術を遂行する力が上がっているように感じました。世界大会ともなれば、当然対戦相手を研究しますが、その分析をチームに落とし込む精度が高まっている。つまり、相手が日本に対して臨む姿勢も変化しつつあります。これまで日本は相手をリスペクトして戦う機会が多かったですが、これからはアメリカ戦のようにリスペクトされる側に回ることも増えるでしょう。
そうなったときに、グループとしての動き、パスやテクニックの精度という従来の強みに加えて、さらに打開する策は何なのか。例えば戦術の幅、セットプレー、違う特徴のあるスペシャリストをベンチに置く……などでしょうか。なかなか簡単なことではないですが、ベスト8、ベスト4を目指す上では、必要な要素です。
一発勝負に強かったメキシコ。
日本をベスト16で破ったメキシコの姿勢にも学ぶべき点は多かったと思います。正直、グループリーグの戦いを見る限り、日本は勝てない相手ではなかったはず。
ただ、メキシコが持っていたのは、一発勝負に勝つための術。苦しい展開でもFKで得点を奪う。劣勢の時間帯を耐え凌ぎPK戦に持ち込む。決勝まで進んだ戦いぶりを見ていると、改めて「戦う」という部分において学ぶ点が多かったと思います。
メキシコではこの世代の試合に一発勝負のレギュレーションが多いと聞いたことがあります。一方で日本はリーグ戦が主体になりました。もちろん高校選手権、Jユースカップなど一発勝負の大会もありますが、システムが整備された今、10代の選手たちに“ギリギリの戦い”をどう経験させていくか。そこも考えていく必要はあるかなと感じた部分でした。