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岩清水梓が妊娠で不在も4冠に照準。
監督と選手が語るベレーザの勝負勘。
posted2019/11/26 08:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Tetsuro Kaieda
「かつて、ベレーザがリーグ4連覇を達成したとき、自分は若手のひとりでした。再び、群を抜く強さを持つチームになりたい。そうなれる要素はあると思うから、そこに挑戦したいですね。いまの若い子たちが自分たちのあとを継ぐ。きっと、実現させてくれますよ」
岩清水梓が語ったのは、2016年の夏。己の不明を恥じるばかりだが、当時の私はそう聞かされても本気にしなかった。
ここ最近20年で見ると日テレ・ベレーザは、2000年からリーグ3連覇、'05年から4連覇を成し遂げている。
しかし、その頃とは時代が違う。'11年、ドイツで開催されたFIFA女子ワールドカップでなでしこジャパンが世界の頂点に立ち、日本の女子サッカー界は一大転機を迎えた。競技の裾野が広がり、西の雄であるINAC神戸レオネッサをはじめ、力のあるチームが各地に出現している。
この年、ベレーザはリーグを連覇し、その勢いを加速させようとしていた。岩清水の描く青写真はやがて現実味を帯びていくことになるのだが、最終的に自身があのような形でチームに寄与しようとは想像の埒外だったに違いない。
「イワシが抜けて難しさはあったが」
11月2日、プレナスなでしこリーグ1部の最終節、日テレ・ベレーザはマイナビベガルタ仙台レディースを4-0で下し、前人未到の5連覇を決めた。ピッチに岩清水の姿はない。その約3週間前、クラブの公式サイトで入籍と妊娠を発表。今季1冠目となる、8月3日のなでしこリーグカップ決勝、神戸戦の勝利を置き土産に、別メニュー調整に入っていた。
昨季からベレーザを率いる永田雅人監督は言う。
「イワシ(岩清水)が抜けて難しさがあったのは事実ですが、やり繰りが大変だと表に出すわけにはいかない。それを彼女は快く思わないだろうし、チームメイトも大丈夫だよと言いたいところがあったんでしょう。全員が黙々とやっていました。
結果として、何人かの選手が異なるポジションでプレーし、新しいやり方にもトライすることになった。その取り組みがシーズン終盤で生きることに。イワシがメンバーから外れたところから、最後までつながっていたように感じます」