酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ポジション別MVP獲得数で分かる、
坂本勇人&森友哉の歴史的価値とは。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/11/29 11:50
万能ショート・坂本勇人と打てる捕手・森友哉。2人のMVP獲得には多くの野球ファンも納得だろう。
ホークスとライオンズが興味深い。
当然だが、史上最多の46回のリーグ優勝を誇る巨人が全体の3割近い45回の受賞。9回の王貞治、5回の長嶋茂雄、3回の川上哲治、松井秀喜など圧倒的な顔ぶれだ。坂本勇人は巨人では26人目の受賞者となる。もちろん、遊撃手としては初めてだ。
続いてホークス。野村克也が5回、山本一人が3回。ホークスは1988年の門田博光から1999年の工藤公康まで10年の空白がある。この間に南海からダイエーに親会社が変わり、本拠地も大阪から福岡になった。大きな転機があったのだ。
続くライオンズは稲尾和久と東尾修が2回ずつ受賞している。ライオンズも西鉄時代の1958年に稲尾和久が受賞してから1983年に東尾修が受賞するまで、24年のブランクがある。この間に西鉄、太平洋、クラウンライター、西武と親会社が変わり、本拠地も福岡から埼玉になっている。なお、森友哉はライオンズでは前年の山川穂高に続いて13人目の受賞だ。
金田、立浪、清原らも受賞ならず。
繰り返しになるがMVPは、基本的に「強いチームの主力選手」でないとほぼ受賞できない。弱小チームの名選手の中には、大活躍しても縁がなかった選手も多い。
球史に残る選手でも、今年亡くなった史上最多400勝の金田正一、史上3位320勝の小山正明、打者では2480安打の立浪和義、525本塁打の清原和博などもMVPには無縁だった。
森友哉はまだ24歳。過去にはライオンズの先輩の稲尾和久が20歳で受賞しているが、森には大捕手、大打者への期待がかかる。
30歳の坂本勇人はここまで1884安打、来季には史上最年少での2000本安打への期待がかかる。史上8人目の2500本安打、2人目の3000本安打も夢ではない。
そういった点を踏まえて、今季の両リーグのMVPはともに「ゴールではなく通過点」だったことに大きな意味があると言える。