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ジャパンカップを制した24歳の決断。
スワーヴを導いたマーフィー騎手。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2019/11/25 11:40
スワーヴリチャードを2度目のGI制覇に導いたオイシン・マーフィー。また外せない騎手が出てきた。
ラスト200mで勝利を確信。
ラスト400mを切ってもまだダイワキャグニーが先頭をキープしている。
2番手はカレンブーケドール。すぐ内のスワーヴリチャードが差を詰める。
ラスト300m付近で、先頭のダイワキャグニーに追いついたスワーヴリチャードは、ダイワの内に進路を取った。カレンはダイワの外へ。スワーヴとカレンがダイワを間に挟んで抜き去ったとき、スワーヴがカレンの前に出た。
「ラスト200m地点で、勝てるという実感を得ました。重馬場なので馬は疲れているけど、大丈夫だ、と」
マーフィーの右ステッキに応えて末脚を伸ばしたスワーヴリチャードが、追いすがるカレンブーケドールに3/4馬身差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。勝ちタイムは2分25秒9。昨年より5秒3遅かった。
2度の分岐点でどちらもインを選択。
「道中は馬をリラックスさせることを最優先にしました。ムダな動きをなくして、エネルギーを溜めた。GIに乗るときは、いつも枠順を見て、いくつかプランを立てます。カレンブーケドールが1番枠、ワグネリアンが2番、ルメール騎手の馬(ムイトオブリガード)が4番、岩田騎手の馬(ユーキャンスマイル)が6番に入っており、どの馬について行けばいいか考え、カレンブーケドールについて行くことにしました」
そう振り返ったマーフィーは、直線入口のほか、ラスト300m付近でも内と外の両方に進路を取るチャンスがあったのだが、どちらのケースでも内を選択した。
「自分の前にいる騎手がこのまままっすぐ行こうとするのか。その馬はまっすぐ行きたがっているのか。そして、その騎手は鞭をどちらに持っているのか。一瞬の判断ですが、そうしたことをもとに進路を決めています」
ラスト300m付近で前にいたダイワキャグニーの石橋脩は鞭を左に持ち、馬を右側へ、つまり外へと誘導していた。それを見て、最終的に内を突いたのだろう。ワールドクラスの判断力である。