プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプール中盤が“弱点”から強みに。
マンCを圧倒した機能性とキーマン。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2019/11/17 11:40
クロップ・リバプールの完成度を見せつけた90分間。聖地アンフィールドでグアルディオラ・シティを完膚なきまでに葬った。
ファビーニョがアンカーで本領。
同時に、レギュラーと控え組の実力差が否めない前線に故障者が出た場合、それを補う創造力と得点力に乏しい中盤が、選手層の厚さもリーグ最高とされるマンCとのタイトルレースの中で不安要素と目されていた。
昨季はジェイムズ・ミルナーの5得点がMF陣で最多。それも、得意のPKによる3点を含んでいる。今夏の移籍市場で即戦力が加入したわけでもない。にもかかわらず、中盤に関する不安が解消された要因は2つある。
1つは、ファビーニョの本領発揮だ。試合日の『サンデー・タイムズ』紙には、マンCのフェルナンジーニョに代わる「現プレミア最高のアンカーマン」との見出しが躍った。
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また翌朝の『デイリー・テレグラフ』紙で「スティーブン・ジェラードの穴を埋めた」と評されたセンターハーフは、移籍1年目だった昨季の終盤から存在感を見せ始めた。中盤の底で冷静に目を光らせ、タックルもパスも的を射ているメトロノーム役は、ジェラードのようにキラーパスを狙うタイプではないが、迅速かつ確実な繋ぎで貢献を見せた。
好例はチーム2点目のシーン。ファビーニョが右SBトレント・アレクサンダー・アーノルドに預けたボールは、左SBアンドリュー・ロバートソンへとスイッチされ、絶好のクロスとなってサラーのヘディングを呼び込んだ。
このブラジル人MFは、いざとなれば自らも上がってゴールを狙う意欲と技術も備えている。開始早々の6分には、自軍ペナルティエリアでの攻守入れ替わりから22秒という速攻を自ら締め括って先制点を奪った。20m強の位置からゴール左隅に叩き込んだミドルシュートは、クラウディオ・ブラボではなく、シティの第1GKエデルソンだったとしてもセーブは不可能だっただろう。
ヘンダーソンの進化が大きい!
もう1つの理由は、攻撃的役割を担ったヘンダーソンの存在だ。
個人的には、こちらの進化の方がインパクトが大きいと思っている。
ファビーニョがアンカーに定着できたのも、在籍9年目の現キャプテンと指揮官の話し合いが背景にあるからだ。片時も足を休めないプレッシング、身を挺してのタックルと「フォア・ザ・チーム」の精神を体現するヘンダーソンは、中盤中央はファビーニョが最適だと認めたうえで、自身の持ち味である攻撃寄りの起用をクロップに直談判したのだ。