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フロンターレが得た栄冠以上の経験。
勝利への嗅覚は新たな伝統となるか。 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byGetty Images

posted2019/11/12 18:00

フロンターレが得た栄冠以上の経験。勝利への嗅覚は新たな伝統となるか。<Number Web> photograph by Getty Images

山村和也が古巣相手にゴールを決め、喜ぶ主将の谷口彰悟。タイトルを獲ることで川崎の“強さの質”が変わってきている。

我慢できるところは我慢しよう。

 いつ鹿島に得点が生まれてもおかしくないほど一方的な展開だった中で、川崎は反撃の隙を虎視眈々と狙い、チャンスを掴み取る握力を見せた。

 先制点の9分後には、相手のセットプレーのこぼれ球をカウンターにつなげて長谷川竜也が追加点を挙げ、敵地でしたたかに勝ち切っている。鹿島を首位の座から陥落させるだけではなく、わずかな希望ではあるが、優勝争いにも自らの可能性も残した。

 試合後のミックスゾーン。

 ディフェンスリーダーの谷口彰悟は、苦しい時間が長くなりながらも、勝つための意思統一が出来ていたと振り返る。

「後半の立ち上がりも、相手がギアを上げてくる圧力を感じましたね。そこからうまく反撃できればよかったですが、我慢できるところは我慢しようと思ってました。押し込まれてもいましたけど、比較的、冷静に周りを見ながらやれていたと思います」

大島が珍しく「すごく嬉しいです」。

 珍しく大島僚太が「すごく嬉しいです、すごく」と喜びを強調していたのも印象的だ。防戦一方となる時間帯が長くなっても、勝機を見出すための試合運びをチーム全員が慌てずに実行し続けた。その勝ち方に手応えを感じるという。

「耐える時間が長いなと思いながらも、全員が攻めのことを頭に残しながらプレーしているからこそだと思います。そこはショウタくん(GK新井章太)もそうで、出るところで出てくれる。戦い方や内容は納得いかないところもありますが、シーズン終盤になってセットプレーの重要性を含めて、そこで点が取れたことはすごく嬉しいです」

 勝負強さを見せる。相手の隙を見逃さない。チャンスを仕留める。

 活字にするのは簡単だが、それをピッチで実践し続けるのは本当に難しい。実際、この試合の勝敗は紙一重だったことは、「チャンスにたまたま決めて、向こうは外した」(家長)、「どっちに転ぶかわからない試合でしたが、こっちに結果として出たのは良かったです」(山村)、といった選手たちのコメントが物語っている。

【次ページ】 紙一重の分厚い差を打ち破る。

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