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五輪代表選考に急な「待った」!?
クライミングでも国際組織の謎決定。 

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森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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photograph byKenichi Moriyama

posted2019/11/07 11:30

五輪代表選考に急な「待った」!?クライミングでも国際組織の謎決定。<Number Web> photograph by Kenichi Moriyama

8月のクライミング世界選手権で5位だった野中生萌も、急転直下で代表決定?

「開催国の裁量」で内定を保留してきた。

 ただし、開催国枠は、そこにだれを選ぶかを「開催国の裁量で決められる」という利点がある。

 その規定を利用して、世界選手権で日本人最上位の選手を男女1人ずつ代表内定した後は、各選考大会で所定の成績を残した選手が現れても内定を保留し、2020年5月に開催されるジャパンカップで残る1枠ずつを決定することにしていた。

 この決定方法はややわかりづらく、開催国枠規定の拡大解釈ととれる部分もあるので、当初は報道陣などから疑問も相次いだが、JMSCAはIFSCと何度も協議を重ねて、選考規約上問題がないことを確認して進めてきたという。

 実際、世界選手権で10位だった男子のショーン・マッコール(カナダ)と、女子のジェシカ・ピルツ(オーストリア)は、世界選手権直後に母国の代表に内定している。

 これは、楢崎智亜と野口以外の日本人選手はまだ代表に内定していないということを前提にした決定。日本の選考方法が認められていなければ、こういう判断はありえず、ふたりは出場権を獲得できていなかったはずなのだ。

 つまり、少なくともこの時点ではIFSCは日本の選考方法を問題視していなかった。

 しかし10月に入ってから態度を翻し、原田と野中を新たに代表に選出し、以降の選考は認めないという趣旨の通告をしてきたという。これが今回の騒動の発端だ。

IFSCの方針転換に世界中から疑問の声。

 問題は、なぜ、IFSCが急な方針転換をしたのかということ。

 ここについてはまだ不透明だ。関係者に聞いてみたが、係争事案ということもあり、コメントは避けられた。現時点では、CASの裁定を待つほかないのかもしれない。

 しかし混乱は日本だけでなく、各国にも広がっている。

 11月4日にIFSCはウェブサイトを更新し、「CONFIRMED QUALIFIED ATHLETES」と題して、オリンピック出場が決定した選手のリストを発表した。そこには、楢崎智亜・野口のほかに原田・野中も含まれ、マッコールとピルツの名もあった。

 男女ともに計8名。世界選手権では上位7名に出場権が与えられるという規約はどこにいったのか? 海外のクライミングサイトでも訝しがる声が上がっている。

【次ページ】 事実を整理しても、疑問だらけ。

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