第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
今季の箱根駅伝は「ワイドオープン」だ。
出雲駅伝、全日本大学駅伝で見えた優勝の条件とは。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2019/11/07 13:00
全日本大学駅伝で東海大16年ぶりの優勝の立役者となった名取燎太(3年)は初の学生三大駅伝出場だった。
早稲田大学は5強に割って入るか。
そして全日本の早大には驚かされた。前週の箱根駅伝予選会ではまさかの9位。関係者には「これでは箱根は戦えない」という厳しい声も聞かれたが、全日本では2区で主将の太田智樹(4年)が踏ん張って流れに乗り、上位でレースを進め、6位で来年の全日本のシード権を獲得した。1週間でV字回復を果たした相楽豊監督はホッとした表情。
「予選会、全日本の連戦は本当に大変でした。学生は先週の厳しい結果からよく持ち直してくれました。それでも『5強』とは差がありますね。選手たちは『箱根駅伝は3位が目標』とは言いつつ、具体的な差が見えなかったので、今回の全日本でお正月への弾みがついたと思います」
相楽監督は、5強+東国大の間に割って入るため、早大伝統の集中練習の時期を調整しながら目標の3位を目指している。
10人が一体となって流れを作る。
東海大が有利とはいえ、箱根駅伝はワイドオープンな戦いであることは間違いない。
各大学ともミステイクを減らし、エースを活かす流れを作りたいところだ。
東洋大の酒井監督はいう。
「全日本では、3区の相澤(晃、4年)が区間新の走りで一気に首位に立つことが出来ました。ただ、展開を振り返ってみると、11位から追い上げてトップに立っているんです。箱根駅伝で優勝するためには、相澤が追い上げるのではなく、ライバルを引き離すような展開に持ち込みたいですね」
そこに駅伝の醍醐味と、魅力がある。
エースがいても優勝はできない。
ただ、エースがいなければ優勝することは難しい。
箱根駅伝では10人が一体となって流れを作らない限り、目標とするフィニッシュには手が届かないのだ。
2020年の箱根駅伝は、チームトータルの力が試される試合となるだろう。