第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
混戦必至の第96回箱根駅伝予選会。
突破に重要な「3つの要素」で各校を読む。
posted2019/10/24 16:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Yuki Suenaga
ひとことで言えば、“戦国駅伝”。
今季の学生駅伝は、そんな混戦模様が予想されている。
今年1月の箱根駅伝は、東海大が悲願の初優勝。優勝候補の筆頭だった青学大や、東洋大を振り切って初の栄冠に輝いた。
今季はその東海大初制覇の原動力となった強力な「黄金世代」が4年生となり、連覇を狙う。その背中を選手層の厚い青学大や東洋大、駒大が追い、10月の出雲駅伝を初制覇した國學院大はもはやダークホースの域を超えてきた。まだ力を見せられてはいないが、法大、帝京大もエース格の選手の調子が戻れば上位に食い込む地力はある。「7強」ともよばれる各校が鎬を削り、大混戦となりそうだ。
そんな乱戦に拍車をかけることになりそうなのが、10月26日に東京・立川市内(国営昭和記念公園等)で行われる第96回箱根駅伝予選会だ。シード校同様、今季は予選会参加校にも絶対的なチームがおらず、本大会参加の権利を得る10校を争う戦いは最後の最後まで縺れる可能性が高いのだ。
予選会で必要な3つの要素とは。
予選会突破にはいくつかポイントとなる要素がある。
まず1つ目は、絶対的な層の厚さだ。
12人が走り、上位10人のハーフマラソンの合計タイムで競う予選会のシステムでは、いかに大崩れせずに多くの選手が20km超を走りきれるかが最も重要になってくる。全員が絶好調ということは難しいので、たとえ誰かが失敗しても、周りでカバーできるような選手層の厚さが大切になってくる。
2つ目に挙げられるのが、エースの存在。
戦略的に決められた設定タイムのもと、集団で走ることでまとまったタイムを狙うチームの他のメンバーとは違い、原則自由に走って自己判断でタイムを稼ぐことができるエースの存在は、他のチームと差をつけられる大きなアドバンテージになりうる。
そして3つ目に重要な要素が、4年生の存在感だ。
これは学生スポーツならではの要素だが、最上級生の4年生の背中というのは特別な意味を持つ。かつて多くの指導者たちが「大学駅伝は4年生が強いチームが不思議と強いんです」と語っていた。その言葉のとおり、最終学年の選手の頑張りというのは艱難辛苦をともにしてきた後輩たちに、タイム以上の“流れ”を作り出すのだ。