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メンタルも「作法」も独特すぎる。
10代囲碁名人・芝野虎丸の流儀。
posted2019/11/07 18:00
text by
内藤由起子Yukiko Naito
photograph by
KYODO
2019年10月、史上最年少19歳の囲碁名人が誕生した。
「20代の名人はありえない」と言われた中、林海峰名誉天元が23歳で名人を獲得したのが1965年のことだった。
それから44年後の2009年に井山裕太四冠が20歳で名人の座に就いた。
さらにその10年後、芝野虎丸名人が20歳の壁を破り、初の10代名人となった。
令和最初の名人・芝野虎丸は、新しい時代を象徴するかのように、歴代のタイトルホルダーとは全く違うタイプの棋士だ。
「もともとそんなに勝ちたい、トップに行きたいという気持はない」
「自分は棋士に向いていないのかなと」
「この一局にかける、などと思ったことはありません」
どのセリフをとっても、これまでの棋士からきいたことのないものばかりだ。
従来のトップ棋士のやり方。
従来のトップ棋士は、だいたいこんな経過をたどってプロ入りした。
小学校入学前後に碁を覚え、地元で「神童」と呼ばれるほど上達を見せる。
小学校高学年から中学入学くらいまでに見い出され、師匠宅に住み込みプロ修業を始める。
仲間でありライバルと寝食を共にすることで切磋琢磨し腕を磨くと同時に、「負けたくない」という気持が熟成されていく。
また、郷里が遠方であればあるほど、「プロにならなければ、いなかに戻れない」という気持で修業に臨む。
将来タイトルを獲るような棋士は、たいてい中学在学中にプロデビューを果たす。