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メンタルも「作法」も独特すぎる。
10代囲碁名人・芝野虎丸の流儀。 

text by

内藤由起子

内藤由起子Yukiko Naito

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photograph byKYODO

posted2019/11/07 18:00

メンタルも「作法」も独特すぎる。10代囲碁名人・芝野虎丸の流儀。<Number Web> photograph by KYODO

第44期名人戦7番勝負の第5局で、当時名人の張栩九段(右)を破った芝野名人。10代初の7大タイトル保持者となった。

独特な「作法」。

 プロ入りすると、芝野はすぐに頭角を現す。

 3年足らずで「竜星戦」に優勝し、全棋士参加棋戦のタイトル獲得最短記録を更新したり、史上最短、最年少で本因坊リーグ入りを果たしたり。日中竜星戦では最強棋士といわれる柯潔九段(中国)を倒して優勝。その名を世界にとどろかせた。

 このころから芝野の独特な「作法」が話題になる。

 石を打つとき音を立てず、そっと置く。これは相手の思考のじゃまをしてはいけないとの思いから心掛けているのだという。

 対局中のおやつも、相手が中座しているときに食べる。これも食器を動かす音や咀嚼音などが相手の迷惑になりはしないかとの気づかいからだ。

 対局中はずっと正座。一度も崩さない。上着も脱がない。

 内気な性格は、相手を気づかう心に昇華していった。

ネット対局がシャイな芝野にあっていた。

 芝野の勉強方法は実戦が中心だという。

 強くなるには、トップレベルの棋士とたくさん打つことが重要だ。

 昔は修業中にそう簡単には一流棋士と打つチャンスは訪れなかった。内弟子になったり研究会に入ったり、自ら「場」を求めて出かけなければならなかった。プロになってもタイトルホルダーとの対局機会は、勝ち上がらなければなかなか得られない。

 ところが最近は、インターネット対局が盛んで、世界中のトップ棋士と時間の制限なく打つことができる。

 相手の顔を見ないで対局できるインターネットは、シャイな芝野にあっていたのだと思う。

「自分の強みは相手がだれかは気にせず力を発揮できるところ」との自己分析がある。

 名人戦の対局中、相手の視線やオーラは「びんびん感じました。視線が合わないよう、盤上に集中しようと努力した」。インターネット対局を通して、盤面のみを見つめるトレーニングができていったのだろう。

【次ページ】 筋トレで45kgに「増量」した。

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