サムライブルーの原材料BACK NUMBER
被シュートゼロのGK権田修一に聞く。
「90分何を考えた?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJFA/AFLO
posted2019/10/29 07:00
バックパスの処理が主な仕事だったモンゴル戦での権田。
自陣にいるのは自分だけ。
シュートは打たれないほうがいいに決まっている。だが相手のチャンスを防ぐことで体が温まっていくのも事実。それがないまま味方が攻めてばっかりだと、知らず知らずのうちに集中が緩んでしまってもおかしくはない。
ならば、と権田は予測で頭の回転を止めないようにした。
「守る幅は当然広くなります。センターバックがセンターラインを越えて相手陣地に入っていくので、自陣はGKがカバーしなくてはなりません。これだけ守る幅が広ければ、一歩出遅れただけでピンチになってしまう。そういうところに集中を向ける分、逆に神経質になる。まあ、そうはいっても神経質になりすぎても良くない。いろんなことをずっと考えた90分にはなりましたね」
自陣にいるのは自分だけ――。
孤独な戦いだ。ディフェンスラインも裏のスペースは気にかけつつも、実際に残されているのは権田のみ。もし裏に出されたら自分が対処しなきゃいけない。
そこに「いる」ことが大切。
フィジカルは強くともモンゴルの前線にそんなにスピードのあるタイプはいない。裏に出されても、やられる可能性はかなり低い。いやいやそれでも、1%でも危険なにおいを感じたら消さなきゃいけない。味方の位置、相手の位置を常に気にしながら、ポジショニングに注意を払った。
守備のカバー、そして攻撃のフォロー。
後半3分のちょっとしたプレーも気が利いていた。敵陣に入っていた長友佑都が権田まで下げるバックパスで仕切り直している。つまり、かなり前めにポジションを取ってフォローに回っていた。そこに「いる」ことが大切だった。