サムライブルーの原材料BACK NUMBER
被シュートゼロのGK権田修一に聞く。
「90分何を考えた?」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJFA/AFLO
posted2019/10/29 07:00
バックパスの処理が主な仕事だったモンゴル戦での権田。
「やれることは限られている」
気負いもなく、とはいえ気持ちは乗せて。試合後、彼はこう述べていた。
「しっかりやんなきゃと思ったのが半分。とはいえ、練習でやっていることしか試合には出せない。やらなきゃいけない。だけど、やれることは(練習でやっていることに)限られている。急に試合に出ると言っても、GKはそういうもの。ポルティモネンセでもそうですけど『行くよ』と言われたらこっちも『行けるよ』ってやらなきゃいけないのがGKなので」
GKは1つしかポジションがない。試合に出るに越したことはないが、『行けるよ』と自信を持って言えるために準備していくことが求められる。そのことも覚悟したうえで、権田はポルトガルの地へ向かったのだ。
「レベルの高いなかで練習がやれていると思っています。ポルトガルリーグは足元のうまい選手が多いので、そこをより伸ばさないといけないと思ってチャレンジしたところもある。(試合で)通用しないところがあったら帰ってまた練習すればいいわけですから」
達観の域に入りつつある。
言葉もプレーも、力まない。
一喜一憂せず、代表戦のパフォーマンスをポルトガルに持ち帰って日々のトレーニングに落とし込むだけ。リーグ戦で出番がなくとも『行けるよ』を続けている。アジアの厳しいアウェーの環境も、被シュートゼロの試合もすべて己の肥やしにして。
受け身の仕事を、前向きに。
GKってそういうものでしょ。
GK道を往く30歳の権田修一は、達観の域に入りつつある。