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スプリンターズSを予想していたら
ディープの偉大さに改めて驚いた。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2019/09/28 19:00
ロードカナロアの仔ダノンスマッシュがスプリンターズSを制覇すれば、史上初の父仔制覇となる。
ディープの偉大さがこんなところにも。
ということで、印を。
◎ダノンスマッシュ
○タワーオブロンドン
▲モズスーパーフレア
強いと言われる4歳世代の3頭を狙う。モズスーパーフレアが勝てば、音無秀孝-松若風馬による師弟GI初制覇となる。
さて、競馬の原稿を書くとき、案外時間を取られるのはデータの精査で、苦労が多いわりにそれが読者に伝わらず、虚しい思いをさせられることもしばしばだ。
が、今回の父仔GI制覇の事例を探す作業は非常に楽だった。それは、ディープインパクトがいてくれたからだ。
ディープは現役時代にGIを7勝した。皐月賞、ダービー、菊花賞の三冠と、天皇賞・春、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念である。
それら7つのGIすべてをディープ産駒が勝っている。だから、今回は、そのほかのGI(さらに牝馬GIも除いて)の勝ち馬を過去30年ぶんチェックするだけで済んだのである。
ディープは「雇用者のような存在」。
10月3日(木)発売の「Number」本誌の競馬特集でも、7月30日に17歳で世を去ったディープインパクトの記事に、かなりの紙幅を割いている。私も2本を担当し、ディープの現役時代にノーザンファーム(NF)場長だった秋田博章キャロットファーム代表と10年ぶりぐらいにゆっくり話をした(しょっちゅう各地の競馬場で顔を合わせてはいるのだが)。
また、育成馬時代に厩舎長だった横手裕二NF調教主任と、最期を看取った社台スタリオンステーション(SS)事務局の徳武英介さんにもインタビューした。
早来のNFと社台SSは道を挟んで向かい合わせの立地になっている。
もちろん別々に取材したのだが、横手さんと徳武さんは、同じようなことを言った。
「核となっていた存在がいなくなった喪失感は非常に大きいです。ぼくたちの胸にも、ぼっかり大きな穴があいたままです」
NFの事務室で横手さんがそう話したのを聞いて、数時間前の徳武さんの「依存度が高すぎて、私たちの雇用者のような存在でした」という言葉を思い出した。