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スクラムとラインアウトって何?
沢木敬介のタメになるラグビー解説。

posted2019/09/28 08:30

 
スクラムとラインアウトって何?沢木敬介のタメになるラグビー解説。<Number Web> photograph by Getty Images

前回大会よりも日本代表のスクラムは強化されている、と沢木敬介氏。強豪アイルランド相手に「低く組めるか」が見所だ。

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沢木敬介

沢木敬介Keisuke Sawaki

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Getty Images

 ラグビーワールドカップ初戦、日本代表はロシア相手に勝ち点5を獲得しました。次なる相手は優勝候補の強豪アイルランド。

 その大一番で鍵となるのがセットプレー、つまり「スクラム」と「ラインアウト」です。ラグビー観戦をしながら「あれは一体、何をしているの?」と疑問を持った方も多いでしょう。そこで前サントリー監督で、エディージャパンではコーチコーディネイターも務めたラグビー界きっての知性派・沢木敬介氏に、セットプレーの駆け引き、魅力を解説いただきました。決戦を前に、ぜひご一読ください。

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【スクラム】

ラグビーの見せ場のひとつが、フォワード同士が押し合うスクラム。あの組み合いの中でどのような駆け引きが行われ、今回の日本はどう強みを出そうとしているのか。

◇ ◇ ◇

 スクラムの優劣を見分けるのは、単純にどちらが押しているか、押されているか。ルールがわからなくても、とても判断しやすいものです。

 スクラムを組んだ時、ボールを持っている攻撃側の一番の目的は、ボールを出した後に質の高いアタックをすることです。一方で守備側は、組み合いでもその後の局面でも、相手の攻撃にひずみを生じさせること。スクラムは回数も多いので、その攻防の出来はチーム全体のメンタルに影響を与えることもあります。

 前回W杯の南ア戦、序盤はスクラムで相手に押されましたが、我々コーチ陣の想定内でした。時間が経つにつれて押し返せていたし、選手交代によって優勢に傾いてきた。スクラムには相手との相性もあるので後半のメンバーでは押せると予想していたんです。最後の逆転トライのシーンでもペナルティキックではなくスクラムを選択しましたが、プレーしている選手たちに「押せる」という自信があった何よりの証拠です。

「8人がまとまって低く組む」

 日本の場合、どうしても強豪国と体格差があると見られがち。ただ体格はスクラムにおける弱点にはならないと思いますし、間違いなく'15年より今のジャパンの方がスクラムは強いです。海外のチームと試合を組む機会が増え、前回大会を経験した稲垣、堀江は安定感があり、ロック陣にも重量感がありますから。

 スクラム専門のコーチ・長谷川慎さんが取り組む、日本独自のスクラムも形になりつつあります。日本の生命線は「8人がまとまって低く組む」こと。観戦するときは「低さ」に注目してください。

 海外で言えば、オールブラックスのプロップは本当にパワーが強くて、個人で相手を崩せる。その一方で日本は我慢が基本になり、チャンスを窺う戦略。日本のチャンスは、相手が動き出した瞬間です。動けばバランスが崩れるところが必ず生まれる。その瞬間を身体で感じて、8人が力を合わせて押しにいく。それを徹底できるかが鍵になるでしょう。

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