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日本がアイルランドに付け入る隙は?
攻守ともに完璧、超が3つ並ぶ難敵。
posted2019/09/28 08:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
スコットランドの記者は怒っていた。
「この2年間、前半20分の入りに課題を抱えていましたよね? エネルギー、それが今日も改善されることはなかった。なぜですか?」
2シーズン前、ニュージーランド人のバーン・コッター監督に代わって、母国の指揮官に就任したタウンゼント監督は、こう答えた。
「たしかに試合の入りでエネルギー、積極性を欠いてしまったかもしれません。この2、3週間、それを意識してやって来たんですが……」
歯切れが悪い。
前半が終わってアイルランドが17-3とリード。実質的に試合は終わっていた。
この試合、日本と同じプールに属する格上の同士の対戦。どうしても日本の目線に立ってみてしまう。
この日、スコットランドは、「アイルランド相手にやってはいけないこと」をやってしまっていた。
つまり、アイルランド戦を週末に控える日本にとって、「やってはいけない事例集」をプレゼントしてもらったようなものだ。
スコットランドの意図はよくわかる。
まず、最初のトライのきっかけは、スコットランドが自陣ゴール前から脱出を図ろうとキックを蹴った場面だった。
イケメン・スクラムハーフの9番、レイドローが22mの外にキックを上げたが、タッチではなく、コンテストキックで再獲得を狙った。
しかし、チェイスが甘かった。アイルランドの右ウィング、コンウェイがカウンターを仕掛けると、あっさりトライを献上してしまう。
スコットランドとすれば、自陣深い地点での相手ボールのセットピースは絶対に避けるという発想である。だからこそ、タッチキックを蹴ってアイルランド・ボールのラインアウトで再開するよりも、コンテストキックを選択して陣地を戻しつつ、再獲得を図ろうとしたが、アイルランドにチャンスをプレゼントしたようなものだった。