野球善哉BACK NUMBER
U18から学ぶ投手起用の世界標準。
監督批判で終わらせてはいけない。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2019/09/26 11:40
西純矢が素晴らしい投手であることに疑いの余地はない。それだけに、采配にもう少し配慮があってほしかった。
これは永田監督個人の問題だろうか。
日本とアメリカを比較すれば、どちらが選手のパフォーマンス、健康面を考慮していたかは明らかだった。
宮城や西を優先したことで、池田や林、1次ラウンドの2戦目に先発した浅田将汰(有明)も能力の高い投手だったが、彼らはいつ出番が回ってくるかわからないなかで準備しなければならなかった。
大会中、永田監督は先発投手への通達を前日に伝えていたという報道が多かった。そうした手法も、世界では一般的とは言いづらい。次の登板日が分からなければコンディションの逆算が出来ず、モチベーションを保つのも難しかっただろう。
ただ、この起用は永田監督個人の力量の問題かというと、そうではないと私は思う。
日本高野連は9月20日に「投手の障害予防に関する有識者会議」を開催し、「1週間に500球まで」という球数制限のルール概要を発表した。
これは「プレイヤーズ・ファースト」を全く感じないルール設定で、日本の議論の水準が世界から遅れていることを感じずにはいられなかった。
その決定に対する関係者のコメントにも、プレイヤーズファーストの考え方がまだまだ根付いていないことが浮き彫りになっていた。
バットについては、ようやく議論が始まった。
ただ公平を期すならば、同じ有識者会議では金属バットに関して反発係数の低いものを使用する提言が議論されたそうだ。実現すれば非常に大きな改革であり、日本の野球界にとってポジティブな動きである。
アメリカの高校生は反発係数の低い金属バットを使用しており、韓国や台湾では高校生年代から木製バットを使用しているという。この領域では、ようやく「世界基準」に並ぼうとしていると言えるだろう。
国際大会で経験した「世界基準」は日本の野球界にとっていい道しるべになる。投手起用を個人の資質の問題として批判するよりも、高校野球を改革するよい方向に舵を切るべきだろう。