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歓喜と失望を与える「まるで悪女」。
ラグビーW杯、フランスを愉しむ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/24 20:00
試合後に両チームの間で諍いが起きるほど熱い試合だったフランス対アルゼンチン。
久々に「シャンパーニュ」の香りがした。
今回は、4年後のフランス大会開催を見据えた選手編成で(SOのヌタマックはまだ20歳だ)、「これほど期待されていない『レ・ブルー』は過去にない」とメディアに書かれる始末だった。
しかし、9月21日の東京スタジアム、フランスは見事なラグビーを見せる。フランスからは、久々に「シャンパーニュ」の香りがした。
かつては「フレンチ・フレア」と呼ばれ、アタックでは次々にフォローする選手が出現、それがシャンパーニュの泡を連想させた。
しかし、人種構成の変化はラグビーにも変化を及ぼした。力強いアフリカ系の選手が入るようになって、バックスはフィジカルを重視したアタックを見せるようになり、途端にフランスは魅力を失った。
アイデンティティの模索が続いていた。
12番のフィクーは今大会注目のセンター。
驚いたことにアルゼンチン戦の前半、フランスのアタックから泡が弾けた。この時の興奮は筆舌に尽くしがたい。
特に12番のフィクーは今大会注目のセンターだ。
狭いスペースを突く細かなステップ、バスケかアメフト選手ばりのスピンムーブ、そして広いスペースを駆けるスピード。
バックスのラインも興味深かった。どの国よりもラインが深く、選手たちは「タメ」を作ってから走り出す。
最近のラグビーは、とかく前線に立ってSHからの「ワンパス・クラッシュ」(現代ラグビーが退屈に見える要因)が主流だが、フランスは1980年代のようなラインを形成し、バックスが躍動した。
前半を終えて20対3。勝負はあったかに思えた。
France is back!