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歓喜と失望を与える「まるで悪女」。
ラグビーW杯、フランスを愉しむ。
posted2019/09/24 20:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
心が震えた。
フランスとアルゼンチンのパッション、情熱に。
23対21。フランス、薄氷の勝利。
79分、アルゼンチンのボフェリがペナルティゴールを決めれば、試合はひっくり返っていた。しかし、失敗。フランスが辛くも逃げ切ったが、「ノーサイド」の笛が鳴ってから、両軍選手の諍いまで勃発した激戦だった。
なぜ、この試合がパッションの激突となったのか。
プールCの大本命はイングランドだ。そう、「エディーのイングランド」だ。
この男が率いるチームが取りこぼしをするとは考えられない。
つまり、フランス対アルゼンチン戦の敗者は、プールステージ敗退が濃厚となる。
“Do or Die”、生死を懸けた勝負だったのだ。
フランスはこの勝利で、プールステージ突破に大きく前進した。
「歓喜と失望」の歴史。
実は、昔からフランスのラグビーを贔屓にしている。
W杯では優勝ナシ。しかし、フランスはW杯の歴史を彩ってきた大切な国だ。
1987年、準決勝でのオーストラリア戦、セルジュ・ブランコ(東京・神保町に彼の名を冠したお店がある)の奇跡の決勝トライ。
1999年、準決勝で大本命のオールブラックスに圧勝(この試合は傑作中の傑作だ)するも、決勝ではあっさりとオーストラリアに敗れてしまう。
歓喜と失望は、このころからフランスを表す言葉となる。
2007年、地元フランス大会では開幕戦でアルゼンチンに敗れ、満座の前で恥をかかされた(今回はそのリベンジがかかっていた)。