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歓喜と失望を与える「まるで悪女」。
ラグビーW杯、フランスを愉しむ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/24 20:00
試合後に両チームの間で諍いが起きるほど熱い試合だったフランス対アルゼンチン。
まるで、悪女だ。
ところが、このチームは展開が読めない。準々決勝では、これまた大本命のオールブラックスを葬り去り、フランスラグビー史上、最高の勝利を挙げる。ところが準決勝では宿敵イングランドに敗れてしまう。
加えて2011年は決勝まで駒を進めながら、今度は開催国のニュージーランドに7対8で敗れた。
劇的な勝利を収めては、あっさりと負けてしまうというレ・ブルー(代表の愛称)。
気を持たせては、負ける。まるで、悪女だ。
フランス・ウォッチャーの楽しみは、W杯というわずか数週間で、歓喜と失望を味わうことが出来ることだ。
「監督と選手がうまく行ってないことが重要だ」
2015年大会の時、プレスルームでフランスの記者と話をした。フランスはなぜ、こんなに波があるのか。そしてなぜ、どん底からとんでもない勝利を挙げることが出来るのか、と。
「監督と選手がうまく行ってないことが重要だ」
は?
なにを言っているのか、最初は分からなかった。彼は解説を続ける。
「負けるでしょ。そうすると、バラバラだった選手たちが、自主的にカフェに集まってエスプレッソを飲み始める。そうすると、選手たちはまとまる」
不思議なチームなのだ。
そしてここ数年、フランスは恥をかき続けた。
2017年の秋、フランスはパリで日本と引き分けた。恥である。
2018年の秋、フランスはパリでフィジーに負けた。大恥である。