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歓喜と失望を与える「まるで悪女」。
ラグビーW杯、フランスを愉しむ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2019/09/24 20:00
試合後に両チームの間で諍いが起きるほど熱い試合だったフランス対アルゼンチン。
アルゼンチンが息を吹き返す。
ところが、後半になるとゲームは一変する。
フランスは再三再四ペナルティを犯し、アルゼンチンは息を吹き返す。一時はアルゼンチンが21対20と逆転するが、次のプレーで途中出場のフランスのロペスが驚きのドロップゴールを決めて23対21と再逆転する。
最後はフィクーが危険なタックルでペナルティを取られ、アルゼンチンのボフェリがペナルティゴールを決めていれば手痛い敗戦となったが、辛くも逃げ切った。
後半は別人となったフランス。規律は乱れ、自らを追い込んだ。反則するにしても、一目瞭然の派手な反則が多い。
1試合の中で、フランスが「二重人格」だということを示すのは、ままあることである。
それにしても、大きな勝利だった。
極東の質問者に、顔色ひとつ変えずに答えた。
しかし、記者会見に出席したブリュネル監督はずっと浮かない表情をしていた。そこで私は質問した。
「大きな勝利でしょうに、あなたは顔色ひとつ変えていませんね。いまの気持ちを言葉で表現していただけませんか?」
白い口髭を蓄えた監督は、極東の質問者に、これもまた顔色ひとつ変えずに答えた。
「ひと言で言い表すとしたら……」
タメがあった。
「もっと、良く出来たかな」
どこまでも食えないオヤジだ。
それもまた、フランスらしい。
フランスは、この大会を盛り上げてくれるはずだ。
感動的に勝ち進むか、それともあっさりと敗退するかは、分からないけれども。