“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ロティーナ監督の下で迎える新境地。
好機を生む水沼宏太の位置取りの妙。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/09/22 20:00
C大阪で存在感を発揮している水沼宏太。在籍5チーム目で新たな武器を身に付けようとしている。
亜土夢のゴールは「してやったり」
57分には水沼は右サイドでドリブルで仕掛けると、そのままエンドライン付近まで運んでマイナスのクロス。58分には右サイドでクリアボールを左足でブロックし、そのこぼれが中央の柿谷曜一朗に渡るなど、立て続けに決定機を演出した。
さらに84分のMF田中亜土夢の劇的決勝弾にも絡んだ。
右ワイドに開いた水沼は、1点目と異なり、右サイドでドリブルを開始した松田を今度はインサイドに促す判断をした。
「陸からパスをもらった自分がワイドに幅をとることで、間に(FW鈴木)孝司が入ってきた。ワンタッチで陸に戻すと、相手CBとボランチの視線が陸に集中した。奥埜(博亮)がゴール前に動いてクロスを警戒させてから、空いたボランチ脇に左サイドハーフの亜土夢が走り込む。僕的には“してやったり”のゴールでした」
鮮やかな連携から生まれた田中の決勝点は水沼を始め、5人の選手が鮮やかに絡む狙い通りのスーパーゴールだった。2-1の勝利に大きく貢献をした。
「自分が周りを生かしているんだ」
横浜FM時代は自由な発想の中で持ち前の攻撃力を発揮。栃木SC時代はゾーンディフェンスを得意とする松田浩監督の下で守備の基本を学び、鳥栖時代はユン・ジョンファン監督の下で強烈な“槍”となった。
FC東京では「(東)慶悟やモリゲ(森重真人)など、みんなボールが使いがうまかったので、“槍”からこれまでのサイドハーフのスタイルに戻れた。ボールの扱い方をみんなから学ぶことが多かった。ボールを落ち着かせるということをもう一度思い出せたし、それをセレッソでも継続できた」
そして5チーム目、プロ生活12年目を迎える今、これまで経験したすべてをロティーナ監督の下で表現しようとしている。
「常に『ここぞ』というタイミングでスピードアップできるポジショニングを意識してやるようになりました。バックステップを踏みながら構えて、右や左に動いたり、縦に進んだり、後ろに下がったりするプレーは今までなかったプレー。首を振りながら、周りを見て、『次はどこにポジションを取ろうかな』と頭使いながらやっています。
ロティーナサッカーにおいて、サイドハーフが機能しなかったら、ボールも回らないし、後ろからのボールと人の出所も失われてしまう。とにかくボールを受ける、受けないどちらにせよ、僕は『自分が周りを生かしているんだ』という意識でやれています」
冷静な判断と運動量を持ち合わせ、躍動感あふれるプレーを見せる水沼宏太。今、彼は29歳にして、新たな「成長期」を迎えているのかもしれない。