“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ロティーナ監督の下で迎える新境地。
好機を生む水沼宏太の位置取りの妙。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/09/22 20:00
C大阪で存在感を発揮している水沼宏太。在籍5チーム目で新たな武器を身に付けようとしている。
明らかに増えたバックステップ。
「ロティーナはサイドハーフとして自分の幅をどんどん広げてくれているんです。頭を使ってプレーするところと、フリーランの質、味方を生かし、生かされるプレーが求められる。それは僕の考え方とも一致しているんです」
今季、C大阪は第10節松本山雅FC戦から3-6-1から4-2-3-1にシフトチェンジした。すると、水沼は右サイドハーフのレギュラーに定着。9節まではスタメン出場1回だった男が、13日の26節浦和戦まで17試合連続スタメンと、チームに欠かせない存在となった。
彼のプレーを見ていて、気づいたのは試合中の“バックステップ”が多くなったことだ。
昨年まではボールの動きを見てから、ワイドに張る、またはインサイドのポジションを取ることが多かった。だが、今年はスタートから意識的にインサイドにポジションを取っているように見える。そこから味方との距離感、相手DFの視線を洞察し、バックステップをしながら細かいポジション修正を図っているのだ。
そうなると、必然的に首を振る回数は増える。その分、自分がどこにいるのか、味方と相手がどこにいるのかが把握しやすくなる。状況を把握して動き出すからこそ、その精度もまた必然的に高くなる。
サイドバック松田との連係。
相手DFは彼の動きの予測が付きづらくなり、常に彼の動きを意識しておかないと死角に潜り込まれたり、ポゼッションやフィニッシュへの関わりを持たれてしまう。だが、相手からすれば、彼ばかり見ていると今度はスピードに秀でた右サイドバックの松田陸にスペースに走りこまれてピンチを招いてしまう。
「ロティーナは『DFがこう来たら、この立ち位置にいるべき』とか、『こう動くことで、後ろは入る場所を選べるよ』など、かなり細かく意識を持たせてくれる。僕も単体で動くよりも、複数の選手と一緒に動いた方が、お互いの距離感も良くなるし、狙いを共有しやすくて選択肢も増える。それはロティーナサッカーにおいて重要なことだと思っています」