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敵地でいじられ、死球でもなごむ。
日本ハム杉谷拳士が愛される理由。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2019/09/18 20:00

敵地でいじられ、死球でもなごむ。日本ハム杉谷拳士が愛される理由。<Number Web> photograph by Kyodo News

本塁打を放ってベンチに戻っても、チームメイトに“無視”されてしまう杉谷拳士。ファンはそんな姿を見るのも楽しい。

取り組む姿勢、練習量は秀でていた。

 入団テストを視察していたメンバーも、プロで通用するという一致した評価ではなかったと後日、聞いた。ただ潜在能力を認め、伸びしろに期待する推薦者もいたことで、同年ドラフト6位で指名された。谷元投手よりも指名順は、1つ上だった。プロで成功しようという意思の強さも、指名を決断する1つの要素になったということも、ドラフト後に知った。

 入団時から際立っていたのは能力ではなく、愚直さだった。時折、ファームを取材に訪れると、高卒で同期入団の中島卓也選手と黙々と練習していたシーンを思い出す。失礼かもしれないが、ともに入団時は突出した存在ではなかった。ただ野球への取り組みのクオリティー、そして練習量は、歴代の高卒ルーキーの中でも秀でていた。

 グラウンド、室内練習場で黙々と個人練習を積んでいるシーンは、今も鮮明に覚えている。

 ファームのコーチ陣からも「中島と杉谷は、いつか一軍の戦力として出てくるかもしれない」というような声も日増しに、聞かれるようになっていった。そして、ともに台頭した。今シーズン、高いステージで戦ってきたプロ野球選手の証し、国内フリーエージェント権を取得するまでに上り詰めたのである。

 そんなプロ入りからの道のりを今も大切にし、その時の気持ちを維持しているからこそ、今の杉谷選手が、「杉谷拳士」という定位置があるのだろう。そう思う。

スペアがいない杉谷拳士。

 なぜ、支持されるのか――。

 万事に全力を注ぎ、一生懸命だからである。

 プレーでも、ファンを含めて人を楽しませようとするパフォーマンス。活躍をすれば、はしゃぎ、致命的なミスをして極度に落ち込んでいる場面を、目にしたこともある。パフォーマンスでも稀に、スベッてしまって下を向いていたこともある。

 突き抜けた明るさ、笑いを運ぶサービス精神のあふれた言動の裏には、全力と一生懸命が同居している。

 スペアがいない「杉谷拳士」という定位置を築いた土台である。

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