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“テコンドーの貴公子”鈴木セルヒオ。
「惜しかった奴」が東京五輪へ!
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2019/09/17 11:00
2019年2月に開催されたテコンドー全日本選手権で3連覇を果たした“テコンドーの貴公子”鈴木セルヒオ。
なぜ日本の大学に進学したのか?
そのまま韓国の強豪大に進む話もあったが……セルヒオは日本の大東文化大に進学した。「韓国の強い大学で強化合宿を1カ月ほど張ったけど、高校とあまり環境が変わらないんじゃないかと思い始めた。そう思った矢先に日本の話があった。なんとなく新しいところに行ってみようという思いがありましたね」
過去あまたの名選手を育てた、大東文化大テコンドー部の金井洋監督の指導は刺激的に映った。
「正直、韓国のコーチより怖かった。ケツバットとか逆立ちみたいな罰ゲームはなかったにもかかわらず、オーラというか、一言一言が重い」
ある日、セルヒオが技術的なアドバイスを金井監督に求めると、「自分で考えろ」と突き放された。
「その時は思わず『教えろよ』と反発したくなりました(笑)。でも、そういう指導をしてくれたおかげで、考えるテコンドーができるようになったと思う」
飛躍のきっかけは2013年秋に行なわれた全日本学生選手権での優勝だった。
「自分も、やれば結構できるんじゃないかと思えるようになりました」
韓国と日本の練習はまったく異なっていた!
韓国と日本の練習の違いも肌で感じた。
「まずは練習量が違う。韓国の方が圧倒的に多い。朝昼晩と1日3部練習。全部で4~5時間も練習する。僕は韓国は量、日本は質というふうに認識するようになりました。(高校生だったせいかもしれないけど)韓国はやらされる練習、日本は自分からやる練習という印象もある」
大学3年でシニアの全日本選手権で初優勝すると、その勢いで初出場となる2015年の世界選手権でもベスト16まで勝ち上がった。
「ようやくここまで来たという感じでした。当時のテーマは防御。『攻撃は最大の防御』という言葉もあるけど、あの頃の僕は『防御こそ最大の攻撃』という思いでやっていた。相手の攻撃をサバいて、チャンスがあれば、しっかり攻撃する。いまはルールが違うのでちょっと変わりますけど、そういう考え方になってから勝率は上がった」