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グレコと東京五輪にかける青春。
文田健一郎はカザフで金色に輝く!
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKiyoshi Ota/Getty Images
posted2019/09/15 11:40
2019年6月に開催されたレスリング全日本選抜選手権大会で優勝している文田健一郎。
「ラグビーとアメフトより違うと思う」
文田の場合、咄嗟に出てくる技はグレコの代名詞でもある反り投げだという。
「バテている時に咄嗟に出てくる。グレコをやってきた中で一番大事にしてきた技でもあるし、切羽詰まった場面では必ず出る。いや、逆にそれしか出てこない」
同じレスリングという競技に括られているが、文田にとってグレコとフリーは似て非なる格闘技だ。
「ラグビーとアメフトより違うと思う。一緒に練習する機会も多いけど、サッカーとラグビーくらいの違いを感じますね」
日本のレスリングはアメリカから伝わってきたという歴史的な経緯もあり、フリースタイルを中心に普及した。幼少時からやるとしたら、選択肢はフリーしかない。小学校5年の時にレスリングを始めた文田もそうで、子供心に「フリーこそレスリング」という認識の上でマットに上がっていた。
「フリーの技はタックルとか、もつれた中での攻防が多かった。ただ、僕は(ちゃんとした)タックルをできなかったし、やっていて少し違和感というか、『このスポーツは面白くない』とさえ思っていました」
本格的にグレコに取り組んだのは高校から。
レスリングの見方が変わったのは、中2からグレコをやるようになってからだ。
「相手が宙を舞う。こっちが投げられそうになったら空中でバランスをとって投げられることを回避する。そういうアクションが新鮮で今まで感じていたレスリングとは全く違っていた。こっちの方が自分には合っていると思いましたね。グレコを始めたらフリーの方の成績も良くなりましたよ」
本格的にグレコに取り組むようになったのは、父・敏郎さんが監督を務める韮崎工業高校に進学してからだ。この高校はレスリングで、ロンドン五輪フリースタイル66kg級で金メダルを獲得した米満達弘(自衛隊)を生んでいる。