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グレコと東京五輪にかける青春。
文田健一郎はカザフで金色に輝く!
posted2019/09/15 11:40
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Kiyoshi Ota/Getty Images
グレコローマンスタイルをご存じか。
フリースタイルと並ぶレスリングのスタイルで、世界で最も有名なレスラーとして名を馳せたアレクサンダー・カレリン(ロシア)もグレコの選手だった。ロシアや東ヨーロッパでレスリングといえば、グレコを指す。
このスタイルは上半身しか攻めてはいけないというルールを採用している。よって試合はダイナミックな攻防の連続となることも多い。一昨年の世界選手権で34年ぶりに日本代表として金メダルを獲得した文田健一郎(ミキハウス)は、もっと世の中にグレコを知ってもらいたいという意識が強い。
「グレコは反り投げなどの派手な技が多い。技が出ない試合はとことん地味だけど、技が出る試合はとてつもなく盛り上がる」
レスリングの醍醐味は対戦相手を大きく投げること。その魅力を最大限に発揮できるのはグレコだと思っている。
「単純に負けるのはイヤだけど、投げた方が気持ちいい。レスリングの一番大きな魅力は勝敗云々より派手な投げ技だと思っています」
上半身のみの攻撃に窮屈さは感じない。
グレコでは相手の下半身への攻撃は反則となる。攻撃する部分が制限されることで窮屈さは感じないのか。文田は首を横に振った。
「むしろ下半身を触られない分、自分が攻めに行けるというところもある。それに相手が足を使って守れなかったりするので技はかかりやすい。だから窮屈さというより、そこがより武器になっている感じがしますね」
文田が日本体育大学に進学して以来指導を受けている同大の松本慎吾監督は練習中よくこんな言葉を選手たちに投げかける。
「試合で苦しくなった時、最も頼りになるのは自分の攻撃だよ」