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ルーキーの豊作とFA市場の萎縮。
大物よりも有望株にシフトするMLB。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2019/09/14 08:00

ルーキーの豊作とFA市場の萎縮。大物よりも有望株にシフトするMLB。<Number Web> photograph by Getty Images

9月12日時点で47本と本塁打数トップに立つピート・アロンソ。綽名(あだな)は「白熊くん」。

レイノルズはイチローらに並べるか。

 彼ら以外では、ブルワーズのケストン・ヒウラ('96年8月生まれ)やパイレーツのブライアン・レイノルズ('95年1月生まれ)も見逃せない。

 日系のヒウラは、70試合に出て、301/369/571、16本塁打と渋い成績を残している。コンタクト能力と破壊力がともに高いので、守備力が上がれば面白い存在になりそうだ。

 レイノルズは、地味な存在だが、最大のダークホースだ。122試合に出て、330/392/529、16本塁打。打率3割3分5厘の巧打者アンソニー・レンドンとの首位打者争いは、依然として波乱含みだ。もしタイトルを取れば、アロンソとの新人王争いもどう転ぶかわからない。

 そもそも、打率3割3分以上を記録した新人は、近代野球では48年のリッチー・アシュバーンと2001年のイチローしかいない(同年のアルバート・プーホルズは3割2分9厘だった)。レイノルズは、彼ら歴史的大打者に肩を並べられるのだろうか。

第2のデヴィッド・オルティース。

 ア・リーグにも目立つ新星が何人かいる。私が最も注目しているのは、アストロズのヨルダン・アルバレス('97年6月生まれ)だ。デビューは、今年の6月9日と遅かったが、その後73試合に出場して、313/410/668、24本塁打のハイペース。とくに6割6分8厘の長打率が凄い。

 もしこのままの水準を維持すると、1939年のテッド・ウィリアムズ(.609)、'01年のプーホルズ(.610)、'07年のライアン・ブラウン(.634)といった名だたる大打者の新人の年の長打率を上回る計算になる。膝に難点があるので当分はDHでの起用がつづくだろうが、順調に行けば「第2のデヴィッド・オルティース」と呼ばれる可能性は十分にある。

 そんなアルバレスを追いかけるのが、ホワイトソックスのエーロイ・ヒメネス(96年11月生まれ)とブルージェイズのブラディミール・ゲレロJr.(99年3月生まれ)だろう。

 今季最大の期待株だったゲレロは、110試合に出場し、273/348/453、15本塁打と、いまひとつ際立った成績を残せていない。ただ、大器の片鱗は随所に見られるし、三塁守備がもう少し巧くなれば、ストレスが減って打撃も上向きになってくるのではないか。まだまだ伸びしろがありそうなので、能力を速断するのは避けたいと思う。

 ヒメネスのほうは、107試合に出て、249/297/473、25本塁打という成績だ。荒さは目立つが、ツボに来たときの破壊力には無視しがたいものがある。

【次ページ】 野茂と名勝負を演じた好打者の息子。

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