スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ルーキーの豊作とFA市場の萎縮。
大物よりも有望株にシフトするMLB。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/09/14 08:00
9月12日時点で47本と本塁打数トップに立つピート・アロンソ。綽名(あだな)は「白熊くん」。
野茂と名勝負を演じた好打者の息子。
もうひとり、私が期待しているのはブルージェイズのボー・ビシェット(98年3月生まれ)だ。
まだ38試合しか出ていないが、スラッシュは307/343/578で、10本塁打。名前を見ればわかるとおり、父親は'90年代にロッキーズの主軸を打ったダンテ・ビシェットだ。'95年には三冠王まであと一歩と迫った好打者で、野茂英雄との名勝負を覚えている方も多いのではないか。
30代のビッグネームよりも……。
こう見てくると、近年のFA市場が萎縮気味になるのもわかるような気がする。
大枚をはたいて全盛期を過ぎた30代のビッグネームを買うよりも、10代後半や20代前半の才能ある若手をじっくり育成するほうが、よほど建設的と思えるからだ(経営者ならば効率的という言葉を使うかもしれない)。実際、過去2年のOPSをチェックしてみても、25歳以下の打者の平均OPSは、31歳以上の打者の平均OPSを上回る傾向にある。
この傾向は、当分つづくだろう。というか、すでに舵は切り替わっているのかもしれない。今季15本塁打以上の新人は、現段階ですでに15人。シーズンが終わるころには、20本塁打以上の新人が10人を超えていることはまずまちがいない。