メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「マイナーを目指す」2人の日本人。
高校で芽が出ず、アメリカに渡って。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKatsushi Nagao
posted2019/09/13 19:00
マイナーリーグとの契約を目指す赤沼淳平(左)と福原大生。彼らの挑戦は日本野球の世界を広げている。
高校で結果を出せなかった選手がなぜ?
もちろん、独立リーグと言えども、アメリカのプロ野球は甘くはない。9月1日、シーズンが終わった時点での2人の成績は以下の通りだ。
赤沼 2チーム計26試合(3先発)に登板して、3勝2敗1セーブ、防御率4.26。
福原 2チーム計44試合に出場して、打率.277(OPS.694)1本塁打15打点、6盗塁。
それらの数字は、彼らに厳しい現実を突きつけている。それでも彼らの独立リーグ挑戦には、伝えるべき価値がある。
なぜか――?
赤沼は高校時代の自分について「全然、結果を出せなかった」と言った。福原も「とりあえず大学行ってみてから、どうか」という評価だったと言う。
日本にはきっと、そんな高校生、大学生が大勢いると思う。それが普通なのだ。
それが普通とされているのに、赤沼は「高校で野球は終わり」と考えず、「プロを目指すならば(球団数も指名数も多い)アメリカのほうが広き門なのではないのか」と、他の人々とは違った思考で動いた。
一方の福原も大学野球に身を置きながら、いつの頃からか憧れたメジャーリーグを胸に「選手として一番伸びる20代前半に、日本かアメリカかっていうのは結構、大きな違いになるのではないのか」と、やはり他の人々とは違った思考で動いた。
日本のアマチュア選手が独立リーグやマイナーリーグに挑戦したのは、赤沼や福原が初めてではないが、彼らの「決断」が他の選手たちには出来なかった新たな地平を拓いたのは間違いない。
メジャーリーグにほんの少し近づいて。
赤沼が最初にプレーしたサウスシェア・レールキャッツのグレッグ・タガー卜監督は、こう言っている。
「ジュンペイ(赤沼)は高校卒業後、経済的な負担も覚悟してアメリカの大学に通ってチャンスを広げた。それはもちろん、家族の理解や仲介者の存在なくしては成り立たないことだが、それはすべて彼自身が望んだから起こったことなんだよ」
どれぐらい可能性があるのかなんて、どうでもいい。少しでも可能性があるのなら、動くだけ――。赤沼と福原はとても自分に正直で、とてもシンプルな思考でアメリカの独立リーグに挑戦したのだ。
日本のアマチュア選手がメジャーリーグを見るとすれば、それはきっと、遥か彼方にある。
だが、「そんなの無理だ」と諦めず、海を渡った赤沼と福原には、それがほんの少しだけ、近くに見えている――。