菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星が語るシーズン中の練習法。
トレーニングと副作用の複雑な関係。
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph byAFLO
posted2019/10/08 19:00
菊池雄星は年齢とともに投手としての能力を着実にあげてきた。それも、長期的な視点でのトレーニングを続けてきたからだ。
次の登板を気にしすぎると体力が落ちる。
疲労を取らなくていいのか? という疑問もあると思いますが、アメリカの選手たちはそもそも全ての試合に100点満点の身体の状態で登板するのは不可能に近いと考えています。
僕もコーチから「疲労も何もなく中4、5日でやるのは無理だから。80点くらいの体で1年間戦えるようにするのが大事だよ」と言われました。
中4日だからと次の登板ばかりを考えてしまうとどんどん体力が落ちていくので、そうならないことを心がける必要があります。そしてオフシーズンは強度を上げて体を一回り大きく強くする。この繰り返しです。
「Training is medicine」という言葉があります。
つまり、トレーニングは薬、ということです。
この言葉の意味は、どんなにいいトレーニングでも絶対に副作用があるということです。
負荷が大きいトレーニングをしたら、それだけのリスクがある。そのリスクを正しいフォーム、適切な重量設定、当日の疲労感など様々な視点から判断し、メリットを最大化し、リスクを最小化するためにトレーニングコーチがいるんだとマリナーズで教えてもらいました。
筋トレのデメリットをどう見積もるか。
日本では、疲労との付き合い方として「0か100か」という考え方が強いように思います。
つまり、副作用があるからやめよう、ということが多かったように感じます。
日本では、筋トレをしたら体が重くなる、硬くなるから筋トレをやらない、という選手が多くいました。
たしかに、トレーニングをすれば24~48時くらいは体が重く感じます。硬くなっているように感じることもあります。一時的に筋肉の弾性や滑走が低下し、「硬くなったと感じる」ことが2、3日続くと言われています。
そのデメリットをすごく悪いものと考えると、ランニングなどのメニューを選ぶ方がいいという考えになります。
たしかにランニングやチューブエクササイズなら筋肉痛は起こりにくいですが、一時的に身体が重く感じるというデメリットを抑えようとした結果、長期的な視点で得られるものも少なくなります。
今やっている練習はトレーニングなのか、コンディショニングなのか、エクササイズなのか、スキルなのか。それを選手が理解した上で切り分けて行う必要があると思います。
ちなみに、個人的にはランニングをトレーニングと思って取り組んだことはなく、あくまでもコンディショニングの位置付けです。
もちろん、僕自身はランニングもチューブトレーニングも大切にしていますし、ほぼ毎日取り入れています。つまり、何を練習の「目的」としているかを見極めた上で練習をする必要がありそうです。