菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星が語るシーズン中の練習法。
トレーニングと副作用の複雑な関係。
posted2019/10/08 19:00
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph by
AFLO
シンシナティ・レッズの(トレバー・)バウアー投手と話す機会に恵まれました。球種やトレーニングのことなど、野球の話でとても盛り上がりました。
特に驚かされたのは、彼が24時間ずっと野球のことを考えていることです。物理学が好きな彼の取り組みはマニアックで、レベルの高いものでした。
シーズンオフの期間に、バウアーはある投手のスライダーを真似したいと考えてトレーニングに励んだそうです。
同じ球速、同じ回転数、同じ角度で投げれば、同じスライダーを投げることができるはず。そう考えて、「ドライブラインベースボール」という施設へスライダーの習得と自身のピッチングを研究しに行きました。
シアトルにあるこの施設は、トラックマンのデータを詳細に記録することができます。オフに毎日200球を投げて、その投手のスライダーをコピーすることに成功したと言っていました。
また、彼は薬指に特殊なリングをつけています。
ぱっと見は結婚指輪みたいですが、その中にチップが入っていて、ストレス状態や心拍数、睡眠時間、血液の状態、心臓の具合など、全てをトラッキングしてくれるアプリと連携しているんです。体の状態をチェックして「少し寝たほうがいい」、「深呼吸が必要だ」と、パフォーマンス向上につながる行動がわかるんですね。
彼ほどマニアックな選手は、日本では見たことがありませんでした。こういう選手を生み出すのがアメリカの凄いところだと思います。
日本とアメリカで違う選手の意識。
バウアーを含めて、アメリカに来て感じるのは選手たちがトレーニングにかける情熱の強さです。
日米を比較して、治療やリハビリ、トレーニングの手法自体はそこまで変わりません。むしろ、アメリカはマニュアル化されている部分が多く、日本の方が細かく身体を診ているという印象を受けます。
また、日本人トレーナーにも能力が高い人は大勢います。それはメジャーの多くの球団に日本人トレーナーが所属していることでも証明されています。
ただ、選手自身のトレーニングに関する考え方、意識の高さは、日本とアメリカで確実に違うと感じます。