菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星が語るシーズン中の練習法。
トレーニングと副作用の複雑な関係。
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph byAFLO
posted2019/10/08 19:00
菊池雄星は年齢とともに投手としての能力を着実にあげてきた。それも、長期的な視点でのトレーニングを続けてきたからだ。
高卒1年目で活躍させようとはしない。
自分の能力を高めようという意識がアメリカではどの年齢の選手も共通して高く、10年、20年とメジャーで活躍することを目指して、日々トレーニングに励んでいるのです。
その背景にあるのは、自分の代わりがいくらでもいるという危機感でしょう。
メジャーリーグの下にあるマイナーリーグは、リーグもチームも日本の比ではない数があって、身体能力の塊のような選手が本当にいっぱいいます。彼らはまだ技術が追いついていないからマイナーにいますが、彼らが技術を持った瞬間に一気に成長するのだろうな、という危機感を今年のキャンプで覚えました。
マイナーの選手は、トレーニングの数値もメジャー以上に厳しく管理されています。ジャンプ力測定もあれば、メディシンボールを投げるスピードも計測します。
体重は週に1回の報告義務があって、心肺機能や体の可動域の測定もあります。それを基にして、練習のメニューが組まれるんです。
フィジカルの充実が成長の大前提という考え方があって、4、5年かけてメジャーに昇格させるというビジョンで指導をしているので、成長のスパンが長いです。
ドラフト全体1位であってもそれは同じで、高卒で1年目から活躍しないと「消えた」と言われる日本とは大きく文化が違います。
目先の結果と10年後の結果は違う。
実は目先の1年のことだけを考えれば、体を鍛えるようなトレーニングはしないで疲労がない状態を作る方がパフォーマンスは上がります。
でも、これから長く生き残っていくため、30歳を超えてどういう選手になっていたいかという視点で考えると、シーズン中でもトレーニングは絶対に必要になります。
だから、中4日の登板間隔でもトレーニングをしている選手ばかりです。
例えば、マリナーズのエースであるマルコ・ゴンザレスは、登板日の試合後に1時間半かけて筋力トレーニングをしています。次の日も全身のトレーニング、ほぼ休みの日はありません。
筋肉を落とさないためには、少しずつ刺激を与えていく必要があるのです。当然トレーニングといっても、疲れて試合で力が出せないようなきついメニューはやりません。