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大迫傑、競泳代表が集う“虎の穴”。
高地合宿地として躍進する東御市。 

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別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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posted2019/09/11 11:40

大迫傑、競泳代表が集う“虎の穴”。高地合宿地として躍進する東御市。<Number Web> photograph by Hibiki Beppu

長野県東御市にある「国内最高標高」の全天候型トラック。奥にはスキー場が。

トップ選手の来訪は地域を活性化させる。

 一方で水間は、自身にもう1つ命題があると考えているという。

「もちろん代表チームを応援する気持ちはありますが、それと同時に地域をどう活性化していくのかが、地域おこし協力隊としての自分の役割だと思っています。施設に影響力のある選手を呼びこんで活性化させることで、地方創生につながると良いと思っています」

 水間は、もともとは東御市とは何の関係もなかった人間だ。それでも東京五輪という機会が、こうして地方の小都市と元エリートアスリートとの結びつきを作ってくれた。

 そんな彼が口にしたのが、代表やトップ選手を呼びこむという競技支援の面に加えて、“地方創生”というビジネス的な側面の重要性だ。

 今回の湯の丸の高地トレーニング施設は、もちろん選手たちのためでもあるが、それと同時に実は来訪者の減少が進む地方の小都市にとっては、起爆剤にもなりうるものなのだろう。

2020年に、東御で育った選手たちが。

「合宿地として有名」「スポーツニュースで聞いたことがある」というような要素は、全国的に名前の知られていない都市にとっては、非常に重要なファクターにもなる。

 東御が五輪のチャンスを活かして躍進した地方都市のモデルケースになれれば、スポーツへの自治体による支援もより増えていくのではないだろうか。水間のような稀有な人材の力を借りることで、こういった形で五輪という大会が地方創生につながるというのは、非常に大きなことだと思う。

 この夏を過ぎると、来年に迫った東京の大舞台へ向けて、各競技とも選手選考が本格化する。まずは9月15日、マラソン代表選考レース「マラソン・グランド・チャンピオンシップ」が控えている。

 “虎の穴”で鍛えられた選手たちが、2020年に向けて走り出す。

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